軟式でプレーしたら「硬式球の飛距離が伸びた」 侍U-12逸材が実感した“予期せぬ効用”

文:宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki

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ヤクルトJr.の寺田大智は船橋リトル所属も…軟式球の「NPBジュニア」に出場

 NPB12球団などが小学生のジュニアチーム(軟式)を結成し日本一の座を争った「NPBジュニアトーナメント KONAMI CUP 2025」は、2025年12月26日から29日まで、神宮球場と横浜スタジアムで行われ、阪神ジュニアが3年ぶり2度目の優勝を遂げた。出場選手の中でレアな経験をしたのが、ヤクルトジュニアの寺田大智選手(千葉・船橋リトルリーグ)だ。普段は硬式球でプレーし、侍ジャパンU-12代表(硬式)で主軸を張った逸材は当初、慣れない軟式球に悪戦苦闘したものの“予期せぬ効用”を得たという。

 現時点の体格こそ155センチ、52キロと小柄だが、右投左打で一挙手一投足にセンスの良さがにじみ出ていた。

 寺田は小2で船橋リトルに入団し、以降は専ら硬球でプレーしてきた。2025年夏には侍ジャパンのユニホームに袖を通し、台湾で行われた「WBSC U-12野球ワールドカップ」に出場。サードのレギュラーとして9試合で通算15打数7安打(打率.467)、7打点7四球と打ちまくり準優勝に貢献した。

 その後、あえて軟式のヤクルトジュニアの選考に応募したのは「硬式の世界大会などを経験してきて、もう1つの大きな舞台(NPBジュニアトーナメント)にも立ってみたいと思った」からだという。

 大会2日目の中日ジュニア戦には「8番・二塁」でスタメン出場。2-0とリードして迎えた4回の守備では、先頭打者の二ゴロを後逸(エラー)し、チームはこれをきっかけに3点を奪われ逆転を許した。

 それでもその裏、チームメートの新井一翔選手(西埼玉少年野球)の同点ソロで追いつき、最終6回には1死満塁の絶好機で寺田に打順が回った。フルカウントからのインハイを引っ張って右翼線に運び、劇的なサヨナラ勝ち。エラーの鬱憤も晴らした。

硬式より困難な軟式の守備「スーパーボールみたいなもの」

不慣れな軟式球に対応し大会ではサヨナラ打も放った【写真:加治屋友輝】

 ヤクルトジュニア結成から約4か月。寺田が軟球に慣れるのには、想像以上に時間がかかった。「硬球はバットを上から出さないと飛ばないのですが、軟球に対しては、上から出すと全部フライになってしまいます。投球のライン(軌道)にバットを入れるイメージを心掛けましたが、難しかったです」と振り返る。

 守備も同様だ。度会博文監督は「寺田は最初の頃、今よりもっとエラーをしていました。ボールが違うので無理もありません。守備に関しては硬球より、軟球の方が難しいのではないでしょうか。怖さこそありませんが、跳ね方はスーパーボールみたいなものじゃないですか」と指摘。「プロ野球選手だって、軟球で草野球をやったら、ガンガン打てる人はいませんし、ボールの跳ね方が違うのでエラーする人がたくさんいますよ」と付け加えた。

 それでも寺田を出場メンバー16人に入れたのは、「捕れる捕れないはともかく、フットワークが抜群に良かった。慣れればかなりやれると思った」からだという。寺田自身、父とバッティングセンターに通い「とにかく軟球をたくさん打ちました」と明かす。その甲斐あって、結果的に通算6打数4安打(打率.667)1打点の好成績を残した。

 思いがけない“効用”もあった。「ヤクルトジュニアに選ばれた後、1度だけ硬球を打ってみたら、めっちゃ飛ぶようになっていました。今までにないくらい打球が飛んだのです」と目を輝かせる。「硬球より軟球の方がとらえるのが難しいので、ボールをとらえる力がついたのだと思います」と分析する。

「目標の選手は(元西武の)松井稼頭央さん。守備が良くて、どのコースでも打ち分けられる打撃にも憧れています」。松井氏がメジャーリーグで活躍したのは、寺田が生まれる前の話だが、今どきの野球少年は動画で古今東西のプレーヤーの中から、自分が目指すべき選手を探し当てるようだ。

 中学進学後は硬式チームに入団するつもりで、将来的にはプロ入りを思い描いている。度会監督も「非常に楽しみな選手です」とうなずく。その野球人生において、軟球に挑んだ4か月は貴重な体験となりそうだ。

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