中学王者が練習で打つ4つの球種 「チャンスでポップフライ」撲滅…スイングの幅を作る“我慢”

公開日:2025.10.17

文:磯田健太郎 / Kentaro Isoda

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“中学生の甲子園”で優勝した作新学院中等部が行う4パターンの打撃練習

 8月に行われた中学軟式野球の日本一を決める“中学生の甲子園”「第42回全日本少年軟式野球大会ENEOSトーナメント」で、作新学院中等部は初優勝を果たした。大会を通じて持ち味である堅守を貫きつつも、4試合で15得点。ロースコアが多い軟式野球だが、着実に好機をものにして勝利を手にした。First-Pitchでは小学生・中学生世代で全国制覇を成し遂げた指導者を取材。確実性のある同校の打棒は、普段の練習で打つ“4つの球種”に秘密があるという。

 授業の後の平日練習。室内練習場に集まり、手際よくウオーミングアップを済ませると、4か所でフリー打撃練習を準備する。内訳は下記だ。

1.一塁寄りの角度から来るボールを引きつけて反対方向へ打つ
2.三塁寄りの角度から来るボールを引きつけて反対方向へ打つ
3.投手用ネットの上から投げる緩いボールを引きつけて打つ
4.真ん中付近に投げられるボールを長打になるイメージで打つ

 増渕洋介監督は、4か所それぞれの意図について「(1〜3は)左投手の変化球、右投手の変化球、直球をイメージして打たせています。緩いボールに体を開かずに我慢して、自分のスイングをすることで、ポップフライにならずセンターに強い打球を打つことを大事にしています」と話す。4つ目の打席では少し気分を変え、フォームを大きくは意識せず、強く振る力をつけることを目的にしている。

 軟式野球では力んで打つとボールが潰れやすく、中学では球速も速くなり変化球も解禁され、より緩急をつけられやすい。故に、この練習では自分のポイントまで呼び込み反対方向中心に打つことで、突っ込まず差し込まれず、最もミートしやすいポイントで捉えることを強く意識して取り組んでいる。

 加えてポイントはもう1つ。「色々なボールを想定して駆け引きしながら打つことができるので、自分のスイングに幅ができて“対応力”が身につきます」と増渕監督。様々な角度、球速から投げられるボールを普段から打っておくことで、1球ごとに変化していく試合の状況に応じた打撃ができるようになる。練習から実戦を想定して取り組み続けることで、実際に難しい状況に遭遇しても、迷いなくバットを振れるということだ。

掲げる主体性…選手からはサインに“逆質問”も

今泉主将を中心に主体的に練習に取り組む選手たち【写真:磯田健太郎】

 この日、練習中は増渕監督から選手たちに声をかけることはほとんどなかった。自分たちで集まり、ウオーミングアップをし、練習に取り組む。選手同士で声をかけ合いながら、ちょうどいい緊張感でメニューを消化していった。

 理由は、主体性を理念に掲げているためだという。増渕監督は、「今の子たちって小学校3〜4年生から試合に出て失敗を繰り返してきているので、監督の顔を伺ったり、怒られないようにする習慣が身についていると就任当初から感じたので、それを打ち破るために“主体性”を理念にすることにしたんです」と振り返る。

 練習試合ではノーサインか、選手同士でサインを出し合う。大会では監督がサインを出すが、「自分の想定と違うサインが出たら自分でタイムを取って『本当にそれでいいんですか?』と聞きにいきます」と、現主将の今泉徹太(2年)は語る。掲げる主体性が上辺だけではなく、チームの文化として染み付いている。

 かつては中等部の生徒が高等部(作新学院高校硬式野球部)に進学して活躍することはほとんどなかったが、ここ数年ではレギュラーに定着する選手も現れてきた。増渕監督による技術の強化に加え、「きちんとやることをやっていれば軟式出身でも通用するという自負ができてきたのも大きいのかなと」。増渕監督は10月末開催の「日本一の指導者サミット」に出演予定。自分たちで主体的に考え、行動する習慣が、心の成長も後押しする。

【実際の動画】作新学院中が打撃練習で打つ“4つの球種” ポップフライを防ぐ体の我慢

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