野球上達へ重視したい“学年”「完璧になる」 多賀少年野球クラブの「巧みさ磨く」屋内練習

文:高橋幸司 / Koji Takahashi

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レアな一塁手の練習も…滋賀・多賀少年野球クラブは体育館で細かい技術を磨く

 野球の技術上達のために、重要視したい“学年”があるという。全国大会で3度の優勝を誇る滋賀の学童軟式野球チーム「多賀少年野球クラブ」では、体育館を使った屋内練習での技術習得に力を入れている。指導歴37年の辻正人監督は、「広いグラウンドではなく、狭いスペースだからこそ身に付く“巧みさ”がある」と語る。多賀町にあるホームグラウンド、滝の宮スポーツ公園の体育館で行われている、その内容と意図とは。

 とある週末の練習日、グラウンド横の体育館に集まったのは4年生約20人。約30メートル×15メートルの面積の館内を、マシン5台を置いての打撃スペース、投球スペース、さらに守備、走塁などを行うスペースに区切り、少人数グループに分かれてのサーキット形式での技術練習が始まった。

「雨や雪でグラウンドが使えない時、広いスペースが確保できない時に、多賀では体育館を使ってやります」と辻監督。屋内練習という一般的に体力トレーニングのイメージが強いが、「うちはそうではありません。打つ、投げる、捕る、走るという、確実に“野球”というものをやる」と力説する。

 打撃では、体を大きく使い飛距離を出す監督考案の「多賀打ち」で、安全面に配慮しテニスボールで打ち込む。投球では、小さな力で大きなパワーを生む腱を使った「バネ投げ」を実践する。マットを使ってのダイビングキャッチ、さらには、鬼ごっこと野球の動作を組み合わせた神経系トレーニングなど、5〜6分の短い間隔で移動しながら約1時間半、数多くのメニューをこなしていく。

 ユニークなものとしては、“ファーストの守備練習”もある。「送球してくる野手に向かって体を斜めや横向きにして構えたら、投げる方としては放りにくいし、背中側にボールが逸れたら捕れない。できるだけ正面を向いて構えて、送球が来た方向に前足を出して捕るようにして」と選手たちに説明すると、異なる球筋を2球連続で投げ、テンポ良く捕球させていった。

「ファーストの練習は意外にやらない。でも、うちでは全員にやらせます」と指揮官。実際に一塁を守ることになった時に実用的なのはもちろん、他の内野手や、外野ゴロを狙う外野手にとっても、どう投げれば捕りやすいかなど、一塁手の気持ちを理解してプレーできるようになるメリットもある。

4年生の段階でしっかりと“野球”を教えてほしい…熱心な親からの要望も多数

多賀少年野球クラブ・辻正人監督(左)【写真:早浪章宏】

 辻監督は「小さな部品を磨くよう」と表現するが、このような屋内練習の方法を思いついたのは、冬場に雪に見舞われる多賀町の気候にあるそうだ。「フィールドが広く使えるとなると、どうしても戦略やパワーの練習になって、細かいテクニックや巧みさを磨く練習はもったいなく感じるんですよね」。狭い屋内だからこそ細かい“部品”を磨くことができ、それを広い屋外で実戦的に組み立てて融合させる。その手法を考えついたことが、全国V3や、今夏の「全日本学童大会 マクドナルド・トーナメント」ベスト4という強さにつながっている。

 さらに、この“4年生”の段階で技術を教え込むことも重要なのだという。「指導者の教えを理解して頭の中でイメージができて、実際に体を動かせることが、完璧にできるようになるのが4年生です」。主戦となる高学年になってから、いきなり“本気の指導”をしては負荷が大きい。その前段階から徐々にハイレベルなメニューをこなしていくことで、スムーズに5、6年生へと階段を上がれるようになる。

 そしてもう1つ、保護者の熱意に応えることも理由にあるという。「指導者は『まだあと2年ある』と思いがちですが、親目線からすると、4年生の段階でしっかりと“野球”というものを教えてほしいという要望が多いんです」。難解な用語も理解でき、運動神経系が伸び盛りになる学年だからこそ、中学、高校へと繋がる技術を伝えてほしいという熱心な保護者が多いということだろう。

「1年中グラウンドが使える環境だったら、ファーストの練習をやらせようなんてことも多分頭に浮かんでこない。だから、うちは雪が降る環境で得をしていると思いますね」と笑う辻監督。冬だけでなく、酷暑に見舞われることが増えた夏場の練習としても、屋内活用の必然性は今後も増していくはずだ。環境を逆手にとってチームを強化する手段は、工夫次第でいくらでもある。

 辻監督は、今月27日から開催の「日本一の指導者サミット」に登場し、独自の屋内指導についても詳しく語ってくれる。

【実際の動画】“珍しい”一塁手の練習も「全員やる」 多賀少年野球クラブの屋内練習の様子

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