子どもを成長させるのは大人の“我慢” 気付かなかった息子の怪我…元プロ左腕の指導論
須永英輝氏は日本ハムのアカデミーコーチ、中学生の息子は野球に熱中
投手として日本ハムと巨人でプレーした須永英輝さんは、子どもたちに野球を教える日本ハムのアカデミーコーチであり、野球をしている息子を持つ父親でもある。指導者として、保護者として、少年野球の子どもをサポートする大人の役割は「子どもの成長を感じ取ること」にあると考える。「子どもは大人の縮小版ではない」と話し、時には大人に我慢が必要だと訴える。
須永さんがコーチを務める日本ハムのベースボールアカデミーにも、少年野球に熱心な保護者が多いという。保護者のサポートなしに子どもたちが野球を続けるのは難しいため、須永さんは心強く感じている。
アカデミーでは、未就学児や小学校低学年の児童を指導。中には、ボールを怖がる子どもや、バットにボールが当たらず泣き出してしまいそうな子どももいる。須永さんらコーチ陣は、子どもがグラブを構えているところに柔らかいボールを投げて捕球の楽しさを感じてもらうなど、少しずつでも成功体験を積み重ねられる工夫を凝らしている。
打率3割、防御率2点台で一流のプロ選手と評される野球は、失敗が多いスポーツと言われている。バットやグラブといった道具を思い通りに扱うのは、大人でも難しい。保護者は、子どもがすぐには上手くならないと頭では分かっている。だが、熱量が高まると、子どもたちに対し過剰に結果を求めてしまう時がある。投手だった須永さんは、保護者から「速い球を投げられるようにしてください」「コントロールを良くするには、どうすれば良いのですか」など質問を受けることがある。
「小学生の年代はフィジカルや神経系のトレーニングが大切です。まだ体が成長途中なので、急には球が速くなりません。子どもは大人の縮小版ではありません。まだ骨ができていないので、無理をすれば故障につながります。大人が焦ってはいけません。子どもたちを見守ってほしいと思います」
野球パパで苦い経験…大人が我慢する必要性を痛感
須永さんが保護者に「我慢」を求めるのは、自身の苦い経験も理由にある。野球をしている中学生の息子が小学6年生の時、肘を怪我した。須永さんは早い段階で異変に気付けなかったことに責任を感じ「投げすぎが原因でした。休ませる重要性を痛感しました。自分も、ひとりの保護者として熱くなったり、息子のプレーにもどかしさを感じたりします。でも、大人が我慢しないといけない時はあると思います」と力を込める。そして、保護者や指導者ら大人の役割を、こう話す。
「試合で打てなかったというような結果ばかりを見るのではなく、成長した部分を見逃さないようにするのが大切だと考えています。子どもたちが今、何を頑張っていて、何ができるようになったのか。子どもたちは大人のサポートの仕方で野球を楽しく感じ、上手くなります」
焦りは禁物。大人には、子どもたちを見守って成長を感じ取る姿勢が求められている。