外国人差別は「全くない」 車支給、食事付きの“高待遇”…北欧で示す日本野球の技術力

更新日:2026.08.31

文:磯田健太郎 / Kentaro Isoda

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スウェーデンのカールスクーガ・バッツでプレーする小倉俊治さん

 世界中で同じルールの下にプレーする野球でも、国ごとに違った“文化”が育つ。そして、その中で認められプレーし続けるには“心構え”が必要だ。岡山・倉敷市出身の小倉俊治さんは現在、スウェーデン国内リーグの「カールスクーガ・バッツ」でプレーをしている。日本から遠く離れた地で目にした、北欧野球の“当たり前”とは。また、海外でのプレーを夢見る日本人に届けたい思いとは。

 現在29歳の小倉さんは、岡山の強豪校・倉敷工業から社会人軟式のENEOS水島製油所に進み、更なる高いレベルを目指して2024年からオーストラリアリーグへ移籍。そこでの活躍が認められ、今年4月からはスウェーデンのカールスクーガ・バッツで、投手と野手の二刀流としてプレーしている。野球とは無縁そうな北欧の国からのオファーには「まさか想定していなかった。でも日本人の選択肢を広げられるなら」と快諾した。

 カールスクーガ・バッツは同国に5つあるトップチームの1つで、4月から9月までシーズンを戦う。スウェーデンに足を踏み入れて最初に感じたのは「イメージよりも寒い」こと。最高気温8度という寒さの中で試合をするのは、日本でもオーストラリアでも未経験だ。マウンドにも立つ小倉さんにとっては体が冷え、筋肉が固まりやすく、当初は調整方法に悩んだという。

 また、カールスクーガの町は、首都ストックホルムから西へ250キロほどの離れた場所にあり、他チームと試合をするには約3時間の車移動が必要になる。チームから1台支給される車に選手複数人で乗り合い、運転して球場に向かうという。

 それだけを聞くと過酷な環境に思えるが、「フランス(の野球)は片道10時間の移動もあると聞いていたので、それに比べれば」と小倉さんは笑顔で話す。オーストラリアで磨いた英語力もあり、移動中はスウェーデン人、カナダ人、スロベニア人が乗る多国籍な車内で、何気ない話で盛り上がる。週に1度は日本食レストランで食事ができ、治安も良く、ヨーロッパ各地でニュースになっている外国人差別も「全くありません」という。

 スウェーデン野球の特徴も次第に見えてきた。打撃レベルは高い選手がいる一方で、守備は苦手な選手が多く、助っ人外国人である小倉さんはよく助言を求められる。そんな時は“日本代表”の自覚を持って答えるという。「日本の野球に興味を持っている選手は本当に多いですし、技術力を尊敬してくれているので、思いに応えるようにしています」。体の作りも関節の使い方も日本人とは異なり、動きや意識をどう表現するか言葉の壁に悩むこともあるが、そこにも面白さを見出している。

全く違う“当たり前”に直面も…日本野球の押し付けはしない

カールスクーガ・バッツのチームメート【写真:本人提供】

 日本野球との違いは、他にもある。オーストラリアと同様に、スウェーデンでも投げティー打撃は必ず実戦と同じ投手方向からトスすること。また、アウトを取った後のボール回しは一塁を経由しないこと……。「追い込まれると(バットに)当てに行くのはジャパニーズスタイルだね」とチームメートに言われたこともある。

「それが彼らにとっての“当たり前”なので、僕が何か変えてやろうということはありません。ティー打撃はむしろ、海外のやり方がいいなと思うこともあります」

 自分にとっての“当たり前”を押し付けることなく、変えるところと変えないところ、聞く耳を持つところとそうでないところ、その線引きをきちんとすることが海外でプレーし続けられる秘訣だ。「全部を海外に合わせると、自分の良さもなくなってしまいます。今では、野球を介して世界中どこでも生きていける感覚がある。すごく嬉しいです」と笑顔を見せる。

 小倉さんのSNSには、海外でのプレーを視野に入れる選手から頻繁に連絡が届くといい、海外の現状についてのアドバイスや、英会話指導、チームの紹介も行っている。自身も今は優勝に向けて全力を注いでいるが、将来的には更に上のレベルを求め、他の欧州のリーグでのプレーも見据えている。

「僕自身、ヨーロッパで生活して野球をするなんて予想できませんでした。どうなるか分からない不透明な時代だからこそ、自分の興味を持ったことに向かって行動してほしいですね」と、小倉さんは自身に続く若者たちにエールを送った。

【実際の動画】遊撃→二塁→三塁…なぜか一塁を経由しない? 海外特有のボール回しのスタイル

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