「中学生に変化球は良くない」は真実か 3冠監督の見解…故障が「意外とある」投手の特徴

世田谷西リトルシニアの吉田昌弘監督が中学生の変化球と球数制限に言及

 中学生が変化球を多投するのはありか、なしか――。中学硬式野球5リーグの全国王者による「3rdエイジェックカップ 中学硬式野球グランドチャンピオンシリーズ」が8月27~29日に開催された。リトルシニア代表の世田谷西リトルシニア(東京)は28日の1回戦で、ヤングリーグ代表のオール岡山ヤング(岡山)に0-3で敗戦。シニア選抜大会、日本選手権、ジャイアンツカップに続く“全国4冠”はならなかった。そんな中、吉田昌弘監督が中学生投手の変化球や球数制限に言及。さまざまな意見が渦巻く中、中学野球界の発展に向けて一石を投じた。

 今大会に出場した5チームの中で、唯一8月だけで3度目の全国舞台。打球速度などのデータ計測では担当者が「頭一つ抜けている」と驚くほどの数字を叩き出したものの、試合では過密日程の疲れを隠せなかった。相手を上回る7安打を放ちながら無得点で敗れた吉田監督は「やっぱりダメでした。投手は球がいかないし、みんな体も切れていないし、残念ですけどしょうがないですね」とサバサバした表情。「8月はずっと彼らは頑張りました。ジャイアンツカップを含めて精神的にも肉体的にも彼らは全力でやってきたので、本当に十分です」と選手の奮闘を称えた。

 8月上旬の日本選手権で最優秀選手賞に輝き、中旬のジャイアンツカップ決勝では完封で優勝に導いたエース左腕の福田遊大投手(3年)は救援待機。最終的には3点ビハインドの6回に4番手で登板して1イニングを無安打無失点だったが、組み合わせの“アヤ”でオール岡山とともに2日間で3試合戦う可能性があったため、投手起用の難しさに直面したのは事実だった。

 複数の投手を準備していた吉田監督には投手育成について明確な考えがある。「選手本人の状態と気持ちが大切です」。中学硬式野球では1日最大80球、2日連投だと合計120球などの球数制限が設定されている中、練習から決して無理はさせない。「試合で何球以内など制限があるのは、とてもいいこと」とした上で「1週間で何球以内だったらいいというガイドラインがありますが、その球数をベースに指導するのは私は反対です」と主張した。

「仮に1週間で200球以内として『今週はあまり投げていないから、投げさせても大丈夫だ』という感覚になるのは違うと思います。球数の管理は必要ですけど、選手が投げたくないのに投げさせている指導者も多いと感じます」。世田谷西では投手の希望を聞き、投げたい意思を示した選手が投球練習を行う。「凄く簡単なことです。本人の状態と気持ちが第一。怪我の予防でそこが一番大事なことだと思っています」。その成果で「うちのチームは毎年、肘や肩が痛いという投手はほとんどいません」と胸を張る。

「『変化球イコール駄目だ』という考えはありません」

投手の考えに寄り添うのがチームの育成方針(写真は徳久陽人)【写真:磯田健太郎】

 当然、あまりに投げないのは試合に向けて不安材料になる。「そういう時は『試合に向けて体の状態が悪くなる可能性があるよ』などと話をすればいい」。臨機応変に対応するが、あくまで選手ファーストを徹底。「本人がブルペンで投げたいというのが大前提にある。それが、肘や肩を痛めない一番大事な最初の方法です。試合で結果を出すことは次のステージになる」と強調した。

 まだ筋肉や骨が成長段階である中学生。変化球を投げると体に負担がかかる場合もある。「世間では『変化球を投げると肘や肩が痛くなる』とか『中学生が変化球を投げるのは良くない』って声を耳にすることがあります。でも、本当にそうでしょうか?」。そう疑問を呈して、こう続けた。「私は現場にいて、力いっぱいの真っすぐしか投げられない子の方が肘や肩を痛めるケースが多いと感じます」。

 直球だけを理想のフォームで投げ続けることは簡単ではない。打たれればムキになることもあるし、どうしても力む場面も出てくる。「変化球が投げられないから真っすぐを一生懸命投げるという方が、子どもの精神的な部分も含めて考えると、意外と怪我のリスクがあると思います」。

 だからといって何でもかんでも変化球を投げていいというわけではない。「もちろん、体の負担になる変化球なのか、そうじゃないのかを見極めていかないといけません。ただ『変化球イコール駄目だ』という考えはありません」。球数も変化球も強要はせず、心身をバランス良く育てる。“全国3冠”を達成した世田谷西の根底には、選手に寄り添う柔軟な思考がある。

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