学年バラバラ→組織改革で一体感 “高集客世代”に注力…部員増やす段階育成システム

公開日:2024.06.28

更新日:2024.08.26

文:高橋幸司 / Koji Takahashi

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愛知・北名古屋ドリームスは小学3、4年生育成に注力し選手数安定&成績向上

 野球人口減少食い止め、さらには復活へ、鍵を握る“世代”がある。愛知県北名古屋市の学童野球チーム「北名古屋ドリームス」は、小学生の中でも特に3、4年生の育成に注力し、近年は選手数が安定。2021年には“小学生の甲子園”「全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」で準優勝と実績も残している。「どのチームでも、やろうと思えばできる。ただし時間はかかる」(岡秀信監督)というその取り組みとは、どのようなものか。練習の模様を取材し、秘訣に迫った。

 北名古屋ドリームス(以下、ドリームス)は小学5、6年生の「トップ」、3、4年生の「ジュニア」、2年生以下の「キッズ」に分かれて、週末土日の午前9時から午後5時まで活動を行っている。とある土曜日、北名古屋市内の小学校で行われていたジュニアの練習を訪れると、4年生16人、3年生13人の選手、そして多くの保護者が集い、グラウンドは活気に包まれていた。普段はトップチームを率いる岡監督は、「他のカテゴリーも含めて選手数は全部で73人。1学年に10人強はいる計算ですね」と説明する。

 近隣のチームが合併してドリームスが生まれたのは2006年。今でこそ熱気に溢れ、全国大会の常連として名を馳せるチームだが、かつては違ったという。岡監督が振り返る。

「愛知県は子どもの数が割と多いので、学年ごとにチームを作るクラブが多く、うちも以前はそうでした。しかし、それで何が起こるかというと、各学年で行動するので交流もなくなるし、グラウンド1つにしてもどの学年が使うかなど、余計なイガミ合いが出てくるんです。それでは伝統的に良いチームはできないだろうと考えました」

 そこで岡監督が“組織改革”に乗り出したのが2013年。各学年の垣根を取り払い、現在のような2学年ごとのカテゴリー分けを実施。そして月に1度、チーム代表、各カテゴリーの指導者、マネジャーを務める保護者が集って指導・運営方針を議論する会議を立ち上げた。そこで活発に意見交換をすることで風通しを良くし、チーム内の連携を深めていったのだ。

“近所の野球好きのおっさん”ではなく有資格のコーチ陣が指導

小林正明ジュニア監督(左)の説明を聞く小学3、4年生たち【写真:高橋幸司】

 さらに、チームの魅力向上や発信にも努めた。魅力を作り出すためにも、まずは指導者だ。

 現在、トップには岡監督も含めて4人、ジュニアには2人、キッズには3人と計9人の指導者がいるが、いずれも「JSBB公認学童コーチ」や「JSPO公認スポーツ指導者」など全軟連やスポーツ少年団の資格を持っている。「お子さんを預けたい保護者にとって『誰が教えているか』は、ものすごく重要です。単なる近所の野球好きのおっさんではなく(笑)、きちんと知識・経験を持った人が教えています」と岡監督は力説する。

 ちなみにドリームスの指導陣は、いずれも自身の子が卒団した、保護者としても育成の流れを一通り経験してきている人たちだ。さらに、必ずトップを指導したコーチがジュニアを、ジュニアを指導したコーチがキッズを、教えるようにしている。だからこそ“共通認識”が醸成され、安定的強さにつながる。

 そして、その強さを育む上でも重要なのが、カテゴリーの中間に当たる小学3、4年生の世代なのだという。現在は小林正明ジュニア監督、篠田進太郎コーチの下、投げる・打つ・走る・守るの基礎を粘り強く指導しており、その礎があってこそ、徐々に体力がついてくるトップ世代での成績に結実する。

 岡監督は“組織改革”を実行してみて、この「ジュニア」にこそ“集客力”の鍵があると実感しているという。

「ジュニアに力を入れると、どんなことが起こるか。例えば『一緒に野球をやりたい』と友達を連れてくる。さらに、その友達のお兄さんが入ってくる。そして、園児くらいの弟がいて『せっかくなのでやらせてあげたい』と保護者が連れてくる……。そうやって、スムーズに選手数も増えていったんです」

 未就学児を受け入れるようになったのは2015年から。お金をかけてでも子どもに野球をやらせてあげたい教育熱心な親は、実はたくさんいると岡監督は言う。それを、小さい子には危険だからと拒否していては、他の競技に流れてしまうのは必然だ。

「そして、その親たちは何を求めているのか? シンプルに『子どもの野球が上手くなること』。その要望にチームとして応えてあげればいいんです。『ドリームスならば上手くなれますよ』と、私は自信を持って言えます」

「私たちは本当に無駄なことが嫌いなんです」

トップチームを率いる岡秀信監督【写真:高橋幸司】

 実際にジュニアの練習を見ても、これが中学年の子たちかと思うほど、1つ1つの動きのレベルが高い。それは、コーチ陣の熱心な指導の賜物でもあるし、グラウンドに集まった保護者たちの支えもあってこそだろう。息子や娘が上達していく様が目に見えてわかるのであれば、大人だって自然に集まるし、強いらずとも練習や運営を手伝ってくれるようになる。

「たまたまいい選手がそろっているから『全国を目指すぞ!』ではない。段階的に子どもたちを育てるシステムができている。ここが、どこのチームでもできるけれど、時間はかかるという一番のポイントです。成果が出るかどうかは下の世代からの教育です。上(5、6年)ばかりを重視するチームは多いですが、まずは3、4年生を大事にしないと、野球は衰退していくと思います」

 岡監督の説明は、終始、理路整然として明確だ。ドリームスの指導者の多くは、普段はサラリーマン。だから練習にも余計な“残業”はないし、意味のないミーティングもないし、指導者自身の私生活も大事にする。「私たちは本当に無駄なことが嫌いなんです」。

 野球人口減少が叫ばれて久しいが、当たり前のことが当たり前にできているのかどうか。北名古屋ドリームスの取り組みからは、改めて考えさせられることが多い。

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