多賀少年野球クラブ・辻正人監督 公式戦0勝のチームで走塁指導
次の塁を狙う意識に足の速さは関係ない。滋賀・多賀少年野球クラブの辻正人監督が18日、東京あきる野市で活動する「五日市少年野球クラブ」で出張指導。盗塁における3つのスタートと、成功率を上げるリードの仕方を伝えた。
公式戦で勝利したい――。現在の6年生が1年間、公式戦で一度も勝てなかった五日市少年野球クラブが救いを求めたのは、少年野球のカリスマ、多賀少年野球クラブを率いる辻監督だった。
2時間限定の出張指導。辻監督がチームに欠けていると感じ、指導の重点を置いたのは走塁だった。盗塁や足に自信がない選手に手を挙げさせると、「足の速さは関係ない。みんな走れるようになるから」と語りかけた。そして、辻監督は盗塁には3つのスタートがあると説明した。
1、投手の足が上がった瞬間
2、投手が投げてから
3、投手が投げる前
1は一般的な盗塁のスタートで、3は牽制球がくるリスクを無視した一か八かのギャンブルスタート。辻監督が詳しく説明したのはディレードスチールと呼ばれる2スタートだった。
盗塁は判断とリード 投球の高さやコースで変わる成功率
投球のコースや高さによって、捕手はスムーズに二塁へ送球できるケースと難しいケースがある。真ん中高めの投球は中腰で捕球するため、二塁に送球しやすい。一方、ワンバウンドの投球や右打者の内角側に外れた投球は送球体勢をつくるまでに時間を要する。
辻監督は投球の軌道を見てコースや高さを判断し、ワンバウンドする前にスタートを切る方法を選手に伝えた。こうした選択肢を持つことは、盗塁の成功以外にも効果があるという。
「隙があれば走る姿勢は、相手バッテリーにプレッシャーをかけられます。選択肢を知ることで選手たちには先の動きを考える習慣もつくと思います」
盗塁で重要になる判断とスタート。さらに、塁上でのリードにもポイントがある。辻監督はライン引きを手に、一塁ベースから二塁ベースに向かって白い「矢印」を書く。次に、矢印より右翼側に「直線」を引いた。
矢印が示すのは、一塁ベースから二塁ベースまでの最短距離。一方、直線は進塁と帰塁する上でベストなリードとなる位置を示している。直線のルートの方が二塁ベースまでの距離はわずかに遠くなる。しかし、二塁へスタートを切る時に体の向きを変える角度が小さく、帰塁の際には一塁手のタッチを交わしやすいメリットがある。
辻監督は選手たちに「動かないチームは点を取れない」と繰り返した。盗塁や走塁では、足の速い選手の方が有利にはなる。しかし、走力に関係なく次の塁を陥れる方法がある。