気軽に子どもが指導者に「ねえねえ」 全国大会初Vに導いた“なれ合い”の関係性

文:間淳 / Jun Aida

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「話しやすい環境を作るのが指導者の役割」

 絶対的な“主従関係”が一般的だった少年野球の指導者と選手の関係性は変わりつつある。子どもたちが成長するために、指導者はどんな距離感で接すればいいのか。今夏の全国大会で頂点に立った石川の少年野球チーム「中条ブルーインパルス」は、「なれ合いのようにベタベタしている」という。子どもたちが指導者の“イエスマン”にならない関係を築いている。

 中条ブルーインパルスは8月、高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会「マクドナルド・トーナメント」で初優勝した。印象的だったのは、選手同士の仲の良さ。そして、選手と指導者の距離の近さだった。主従や上下関係のようなものはなく、家族や友達同士のように映った。チームを運営する尾崎弘由代表は「チーム関係者以外の大人が見ると、びっくりすると思います」と笑う。

「休憩時間や練習が終わると、監督やコーチと子どもたちは、なれ合いみたいにベタベタしています。子どもたちが『ねえねえ』と指導者に話しかけます。家や学校での出来事など、何でも話しやすい環境をつくるのが指導者の役割だと思っています」

イエスマンの選手を育てない、指導者にはNGワードも

 子どもたちには、指導者の意見に何でも「イエス」と答える必要はないと伝えている。いつも指導者が正しいとは限らず、指導者が選手を支配する関係になるのを防ぐためだ。尾崎代表は「何でも『はい』と答える子どもをイエスマンと呼んでいます」と話す。選手との関係や信頼を壊さないように、指導者が使ってはいけない“NGワード”もある。

「昔ながらのトップダウンの関係性では、選手は指導者の言葉通りにしか動けなくなってしまいます。また、うちのチームでは指導者が『Not、Not』の言い方をしないように気を付けています。『ライト方向にヒットを打てないなら、レギュラーにはなれない』というように否定の文を続ける表現です。そうではなくて、『ライト方向にヒットを打てたら、野球の楽しみが増えるね』と肯定的に声をかけます。『宿題をしなければ、ゲームはさせない』と自宅でも大人が使いがちだと思います」

 中条ブルーインパルスでは、少年野球の“定番”となっているアウトカウントを確認する声出しを選手に強制しない。また、声を出すのが苦手な選手には決して強要しないという。

「1アウト、2アウトと大声を出すよりも、1アウトだから次のプレーをどうするのかを個々で考えたり、チームで共有したりすることが大切です。おとなしい子どもにはベンチから声かけはしますが、声を出せと強制するのは逆効果です。スポーツはこういうものなんだと否定的にとらえてしまいます。次のプレーに対する準備さえできていれば、心の中で声を出してもいいと思います。それぞれの子どもたちのタイプや考えを大人が理解して、尊重することが大事です」

試合後のミーティングに大人は不在…話し合いは選手同士で

 大人が主導権を握らず、選手中心のチーム運営は試合や試合後のミーティングにも表れている。試合中、ピンチの時もチャンスの時も、話し合いのほとんどは子どもたちだけで完結する。ミーティングには大人は加わらない。尾崎代表は言う。

「子どもたちだけのミーティングなので時間が長いんです。国語力もなければ、物事をしっかりと組み立てていく論理もありません。でも、自分の考えを言葉にするのも練習ですし、ブレインストーミングの力は大切です。大人が口を出すと支配的な関係になってしまうので、じっとミーティングが終わるのを待っています」

 試合になれば判断するのは選手たちで、指導者は手助けできない。選手が考える習慣を付ける環境づくりと、指導者に安心感や信頼感を寄せる関係性。全国の頂点に立つには理由がある。

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