左腕なのに「右半身の話しかしない」 MLB輩出の“理論”が契機…2桁勝利へ覚醒のワケ

文:宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki

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スポーツトレーナー・鴻江寿治氏のキャンプに毎年参加している西武・隅田

 西武の左腕・隅田知一郎(ちひろ)投手はプロ1年目の2022年、1勝10敗と苦しんだ。しかし2、3年目は9勝をマーク。4年目の昨季は初の2桁勝利を挙げるなど、NPB屈指の先発左腕に進化を遂げた。飛躍の秘訣は、利き腕側の“左半身を使わないこと”にあるという。今月12日から16日まで参加した、スポーツトレーナーの鴻江寿治(こうのえ・ひさお)氏が運営する「鴻江スポーツアカデミー」のキャンプ(福岡県久留米市)で話を聞いた。

 鴻江氏にはこれまで、メッツ・千賀滉大投手、カブス・今永昇太投手、オリオールズからFAとなっている菅野智之投手、アストロズ・今井達也投手、ソフトボールの2021年東京五輪金メダリスト・上野由岐子投手らビッグネームが続々師事している。

 隅田も“鴻江理論”に触れたことが飛躍のきっかけとなった。人間の体を大きく分けると、猫背型の「うで体」とそり腰型の「あし体」の2つのタイプがあり、どちらに属するかによって、適した体の使い方や適したトレーニング法などが異なる──というのが鴻江理論だ。

「うで体」に分類される隅田は1勝10敗、防御率3.75に終わった2022年オフ(2023年1月)、チームメートの今井とともに鴻江氏のキャンプに初参加。以降、恒例になっている。2023年と2024年はいずれも9勝10敗。昨季は自己ベストの10勝10敗、防御率2.59をマークした。最速150キロのストレートをはじめ、独特の軌道のチェンジアップやスライダー、カーブなどのキレが増し、制球も安定した。

「うで体」の左腕の場合、右足を上げる際に軸を体の右側につくり、右手にはめたグラブでリードしながら体重移動し、右足が着地したタイミングで上半身を回転させる。一方でボールを持つ左手にあまり力を入れないようにすると、ロスのない投球フォームになるという。「左半身は使うのではなく、勝手に“使われる”感じ。右で引っ張って左は勝手についてくるイメージです」と隅田。いかに利き手側の左半身を意識せずに投げるかが鍵になるようだ。

今季は「15勝5敗で最多勝争いができるように頑張りたい」

スポーツトレーナーの鴻江寿治氏【写真:宮脇広久】

 キャンプ中の14日、隅田は今年初めてマウンドに上がり、参加していた楽天・YG安田(安田悠馬)捕手を相手に29球を投げた。「年始からいつでも投げられる準備をしていましたが、最初に傾斜で投げる時には鴻江先生に見てもらいたいと思っていました」と明かす。

 最後はYG安田が目を見張るほど勢いのある球を投げ込み、隅田は「昨季シーズン終盤には疲れが出て、自分が思うようなフォームでは投げられていませんでした。体のケアなどを経て、今日はこれまで意識してやってきたことが、ある程度いい方向に進んでいることを確認できました。具体的に言うと、左手が背中の方に入らないように、左足を使いたがらないように心がけました」と笑みを浮かべた。やはりポイントは、左半身を使い過ぎないことだった。

 隅田は昨季、開幕直後の3・4月を4戦4勝、防御率0.58で滑り出したが、7月に3戦3敗、防御率4.76と失速。9月も1勝2敗、防御率4.09と苦戦した。投球フォームのロスをさらに省き、シーズンを通して投球の質を落とさないスタミナがつけば、さらなる飛躍が期待できそうだ。

 鴻江氏は「彼は左手で投げるのに、右半身の話しかしない。そこがいい」と説明。「去年の今頃よりずっと状態がいいですし、トレーニングも理にかなっています。去年は10勝10敗の勝率5割でしたが、今年は13勝6~7敗くらいのイメージを描けたらと思います」と太鼓判を押す。隅田自身はさらに高く「15勝5敗で最多勝争いができるように頑張ります」と目標を掲げた。

 1歳上の今井がポスティングシステムでアストロズに移籍し、3年総額5400万ドル(約85億円)、出来高を合わせると最大6300万ドル(約99億円)となる大型契約を結んだことにも刺激を受けている。「プロ野球選手は稼いでナンボだと思います。今井さんはいい契約を取られましたし、あの契約でも安いと思われる結果を残してほしいです。僕も今の年俸では安いと思ってもらえる結果を出したいです」と力を込めた。

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