「ボールを前で放す」が生む誤解 理想の位置は耳の横…習得したい“振られる感覚”

オリックスやMLBでトレーナーを務めた高島誠さんが解説する「手投げ改善法」
ボールは手で投げる。だが、腕を振る前の動きや腕以外の部位に球速や球質を上げる鍵がある。野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」のオンラインイベント「投げ方改善4DAYS」の最終回が、22日に開催された。講師に招かれた「野球塾 Mac’s trainer room」代表の高島誠さんは、理想の投げ方のポイントとなる骨盤の動きや股関節の柔軟性について説いた。
12月の毎週月曜日に計4回開催してきた「投げ方改善4DAYS」は、22日に最終回を迎えた。オリックスやMLBのナショナルズでトレーナーを務めた高島さんは骨盤や股関節に重点を置き、正しい投げ方を解説した。
高島さんは、ボールに力が伝わらないエラー動作の典型「手投げ」の原因も骨盤の使い方にあると指摘する。右投げの場合、骨盤を回転させて右腕を振った時に左の股関節を右肩が追い越す動きをつくれないと、手投げになってしまうという。
「右肩が左の股関節を越えていかないと、右肩や右肘でブレーキをかける投球動作になり、肩や肘に負担がかかって怪我のリスクが高まります。リリースは耳の横が理想で、そこから右肩が左の股関節を越えていくと腕が加速してボールに力が伝わります。骨盤が先に回って腕が振られるから上半身と連動するわけです」
指導現場では「ボールを前で放す」という投球指導が一般的になっている。打者に近いところでボールを放せば、球速や球威が増す。ただ、間違った解釈がされているケースがあるという。
「ボールを前で放すのは間違いありませんが、腕を前に出してリリースポイントを打者に近くするわけではありません。骨盤を回転させ、マウンドの傾斜を使って体を前に倒して投げた結果、打者に近い位置でボールを放す形になるのが正しい投げ方です」
投球に重要な股関節の可動域…ストレッチには注意点も

右投げの投手は、右腕を振るタイミングよりも早く右側の骨盤を回し、右腕と右の股関節が左の股関節を追い越す動きが重要になる。骨盤を回すスピードが速く可動域が広いほど大きなエネルギーを生み出し、球速や球質が上がる。
そのためには、正しい体の使い方を覚えると同時に、動きを体で表現するための柔軟性が必要になる。高島さんは「股関節の可動域を広くするにはストレッチは効果的です。ただ、ストレッチは柔らかい筋肉だけが伸びるので、硬くなった筋肉はボールで押すなどしてストレッチの前にほぐします」と説明した。
高島さんとともにイベントに出演した野球塾「Perfect Pitch and Swing」代表の長坂秀樹さんも、股関節の柔軟性や使い方を投球動作のポイントに挙げた。普段の指導では「腕だけでは大きな力を生み出せないので、冷蔵庫を押すイメージで体を倒す」「股関節の可動域が不十分だと、正しい動きを身に付けられない。投球以前にやるべきことがある」と伝えているという。
4週にわたって開催された「投げ方改善4DAYS」は全て終了した。来年2月にはバッティング指導に特化したイベント「打撃改革3DAYS」が開催予定となっている。
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