「腕を振れ」では伝わらない? 重要なグラブ側の肩…ボールの強さが変わる“胴体主導”

文:間淳 / Jun Aida

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トレーニングコーチ・塩多雅矢氏が重視「胴体で腕を引っ張る動き」

 強い球を投げるには下半身の使い方が大切だ。しかし、小・中学生には指導者の説明を理解するのが難しいケースもある。1日に開催された野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」のオンラインイベント「投げ方改善4DAYS」に出演したトレーニングコーチの塩多雅矢さんは、投げ方のポイントが自然と身に付く上半身にフォーカスしたドリルを勧めた。

 指導者から「下半身を使え」「腕を振れ」と指摘された経験のある投手は多いだろう。指摘自体は間違っていないが、意図が伝わりにくい面がある。軟式野球の全国屈指の強豪校、東京・上一色中などでトレーニングを担当してきた塩多さんは、下半身の重要性を大前提とした上で、次のように話す。

「投げ方に関して、選手の思考は8割くらいが足に向いています。もちろん下半身の使い方は大事ですが、私が最も重点を置くのは胴体で腕を引っ張る動きです。胴体を回す動きに腕がついてくる連動性を身に付けることが重要だと考えています」

 胴体と腕は直接つながっており、その2つを連動させれば大きな力を生み出せると塩多さんは説く。これは、投手だけではなく、野手の送球も同じ。オンラインイベントでは、メジャーリーグの内野手を例に挙げて説明した。

「逆シングルで捕球して、一塁にジャンピングスローする内野手を見たことがあると思います。逆シングルで捕球した時点で、投げたい方と逆向きに助走を取っている形になります。しかも、ジャンプしているので下半身を十分に使えません。それでも、送球はすごく力強いですよね。そうなると、足の役割以上に、上半身の動きが大切なのが分かります。手首で投げているように見えますが、トップを深くつくった状態から上半身を回転させることで強い送球を可能にしています」

胴体と腕を連動させるドリル…ポイントはグラブ側の肩

投げ方を指導する塩多雅矢氏【写真:内田勝治】

 胴体と腕を連動させて力強い球を投げるため、塩多さんが指導に取り入れているドリルがある。目的は、グラブ側の肩の動きを身に付けること。胴体と腕をつなぐ肩を正しく動かせれば、胴体の力が腕に伝導して、腕を振らなくても腕が自然と振られる形がつくられる。

 まず、両足を肩幅に開いて膝を伸ばして捕手と正対する。捕手方向(球を投げたい方向)を0度として、テークバック方向の角度をマイナス、腕を振っていく方向をプラスとする。右投げであれば、ホームベースの向きが0度、三塁側がマイナスで一塁側がプラスという表現もできる。

 投球や送球する際、投げる方の肩はマイナス90度からプラス90度まで、計180度回転させると捉える。ドリルでは、グラブ側の肩の動きがポイントとなる。グラブ側の肩を0度に入れた形で構えて、そこから肩を背中側に回す。そうすると、投げる方の肩はマイナス90度からプラス90度まで自然と回転する。球を投げる腕の動きに意識を置くのではなく、よりシンプルで分かりやすいグラブ側の肩を正しく動かすことで、理想の投げ方を身に付けられる。

 この時、注意するのは「顔の向き」。目線は捕手方向から動かさずに、グラブ側の肩を回す動きに合わせて顔を0度の状態からマイナス45度に傾ける。塩多さんは「小・中学生には、体の動かしやすい部位に意識を向けられる指導を心掛けています」と話す。「投げ方改善4DAYS」は、今月22日まで毎週月曜日に開催している。

少年野球の投球・送球指導に役立つ練習法を紹介…「投げ方改善4DAYS」開催中

 First-Pitchと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では、今月22日までの毎週月曜日、計4日間のオンラインイベント「投げ方改善4DAYS」を開催中です。投球・送球フォームの癖の直し方、球速アップにつながる指導法、正しいキャッチボールなど、選手・指導者・保護者に向けて、小学生・中学生の各野球カテゴリーで豊富な実績を持つ指導者・トレーナー陣がアドバイスします。参加費は無料。見逃し配信もあります。出演者などの詳細は以下のページまで。

【投げ方改善4DAYS・詳細】

【参加はTURNING POINTの無料登録から】

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