最新機器で“大学3番手”も球速アップ 館山昌平氏が経験…特殊球と勝負術で開けた道

公開日:2025.05.24

文:佐々木亨 / Toru Sasaki

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制限時間5分で「自分の持ち味を出してください」

 ヤクルトで現役19年間のプロ生活を送り、楽天で投手コーチを務めた館山昌平氏は現在、社会人野球チームのマルハン北日本カンパニー(宮城県)の監督を務める。今年創部のチームでは積極的にデータを活用する中で、社会人になって自己最高値の球速を叩き出す投手がすでに3人も出現。ラプソード投球スペシャルアドバイザーの肩書も持つ館山氏は、データ重視での“伸びしろ”の見極めと引き出し方を大切にする。

 マルハン北日本カンパニー(以下、マルハン)には11人の投手がいる。投球の回転数や軸の傾き、あるいは変化量などを測定してデータ化できるラプソード。マルハンでは、創部初年度を迎えるにあたり、その測定器を使った選手選考が行われた。マウンドのど真ん中にラプソードを設置。選手は1人約30球、制限時間5分で「自分の持ち味を出してください」というわけだ。館山氏は言う。

「投球を映像で撮って数値を見て、この選手はこういうタイプで、こういうピッチングができるから、獲得したほうがいいのではないか、と。5分間で何ができるか。数値と意欲で選びました」

 特徴は何か。回転軸や回転効率、兼ね備える特殊球を理解した上で、どうすれば伸びるんだろうとイメージができる選手を獲得したという。5月18日深夜に放送されたテレビ朝日「GET SPORTS」(毎週日曜深夜1時55分、関東地区)では館山氏を中心に古田敦也氏、五十嵐亮太氏が実践を交えて特殊球について激論。現役時代から古田氏は投手の特徴を活かす特殊球を持つことの重要性を館山氏に伝えており、そこが多彩な変化球を操ることになったきっかけになったという。

 スタジオでは当時のことを振り返りながら、館山氏が古田氏に感謝を伝えていた。投手の特徴を活かす特殊球への理解などについても、館山氏は力説した。マルハンでは、大学時代にエース級だった投手が、わずか1人。東都大学リーグの3部で主戦として投げていた投手だけだ。ほかには、北海道の大学で3番手や4番手だったり、あるいはベンチ外だったり。確かな実績がない投手でも、「それぞれが持ち味を発揮して投げている事実がある」。創部からわずか3か月で「すでに球速のマックスを更新した投手は3名ほどいます」と自信をのぞかせる。館山氏が続ける。

「自分が伸びる方法を見つける。どういう練習を取り入れて、どういう練習はやめようか。投手はいろんなボールを投げたくなるんですけど、この変化球は消しましょうかなど。トレーニングに関しても、アームアングルや回転効率を損なわないように伸ばしている感じです」

166cm右腕が描く成長曲線と驚異の回転数

「GET SPORTS」で特殊球について解説する館山氏【写真:小林靖】

 マルハンには、身長166センチの粕谷映斗投手がいる。宮城県出身で仙台育英高、八戸学院大を経て加入した右腕だが、球速は136~137キロほどで決して速くない。ツーシーム、チェンジアップ、シンカー、フォークボールなど多彩な変化球を持ち、館山氏が「曲げることに対して得意な投手」と評する右腕はカーブの回転数が2800、スライダーも2700と驚異の数値を叩き出す。すでにチームの3本柱の1人として躍動している。

「おそらく大学の時には想像ができていなかったと思いますけど、今はどういう投球をしていくか、相手にどう見られているかを自分で理解している。今までは真っすぐを強く投げて、そこから変化球を際どいところに投げ分けることをやっていたんですけど」

 球速はなくとも、ストレートは丁寧にコースをつく。変化球は130キロ以上のスピードで、ストライクゾーンに大胆に曲げていく。たとえ逆球でも「オッケー」。「逃げ道というか、ミスの方向を作ってあげて攻めていくということを話しています」と館山氏は言う。

 投手を育成する目的を持ちながら、その投手自身がアナリストとして投球を理解することも大事だと言う。

「アナリストとして、自分がどうあるべきか。どういう特徴があるのかを知る。そのボールをストライクに投げられるかどうかは問題になってくるんですけど、自分で言語化して、それに対して練習に取り組む。今後はアナリストを養成していかなければいけないと思っている。選手自身がアナリストと同等か、それ以上のものを身につけていけるような集団でありたいと思っています」

 監督やコーチの指導も変わる中で、練習やトレーニングに対する選手それぞれの意識は高い。

「データに対して興味を持ってくれている人はすごく多いですし、全員が、自分がアナリスト、自分が評価するとこういうピッチャーだということを理解した上で伸びる方向を決めていってほしいですね。そうすると、たとえば曲げるボールが必要であれば、曲げるボールに対してどういうトレーニングをしていけばいいのか。そういうものを実証していくことが、今後の野球界への恩返しになると思っています」

 そう語る館山氏は、現代野球におけるデータの大切さを実感する。

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