価格“高騰”に廃棄…普及を阻む用具問題 「グラブ作り」で育むサステナブルな野球界

公開日:2023.07.28

更新日:2023.12.26

文:楢崎豊 / Yutaka Narasaki

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夏休みに「マイグローブを作ろう!(グロつく)」を開催する狙い

 試合前にグラブの紐が切れてしまった……。大事な時にこのようなピンチに遭遇したことはあるだろうか。子どもの頃から“応急処置”を身につけられる場所が都内にある。野球グラブを買い取り、修理・再生事業を展開する「Re-Birth」(リバース)」の米沢谷友広氏は今年も夏休みの期間中に「マイグローブを作ろう!(グロつく)」を開催。グラブ制作を通して、紐通しだけなく再生、修復技術を学び、地球に優しい野球界を作っていきたいと考えている。【楢崎 豊】

 プロ野球の世界では道具を大切にしている選手がほとんどだ。同じグラブを15年以上使い続ける選手や「このグラブでないと試合に出られない」とこだわり、試合後のメンテナンスを欠かさない。用具への愛情の表現方法は人それぞれだが、『一緒に育てていく』という言葉がぴったりだ。

 壊れたら、新しいものに交換する――。それでもいいかもしれない。ただ、当たり前だと思わないでほしい。自身も高校球児だったこともあり、米沢谷さんは野球界の課題を感じている。そのうちの一つは用具の高騰だ。5万円以上もする硬式用グラブを購入するのは容易ではなく、経済的な理由で野球を諦める人もいる。そのため、使わなくなった野球のグラブを回収し、独自の技術でリメークし、市場価格の3分の1程度で再生グラブを提供する事業を行なっている。

 グラブ再生で繋ぐ未来へ描きながら活動している中、「再生技術をしっかりと子どもたちに伝えていきたいと思いました。少年野球のグラブで破損することは、紐が切れることくらいしかない。もし、練習中や試合でそれが起きたら『どうしたらいいのだろう』となってしまうので解決できる方法はないかと考えました」。そこで思いついたのが“通称”『グロつく体験』だった。

 昨年から実施したこの企画には幼稚園の年少から小学6年生の子どもたちが参加。兄弟や野球のチームメートでグラブ作りに励んだ子もいた。女子選手の参加も多かったという。保護者も一緒に制作するため「親子で工作のようにグラブ作りのチャレンジする姿を見て、私たちが子どもの頃にやっていたようなキャッチボールをするシーンをイメージしましたね」と米沢谷さんは優しい笑顔で振り返った。

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