ベースボール型授業は77年から21年間姿を消し、10年まで選択式だった

「ベースボール型」授業の目的は、高度な技術の習得ではない。ボールを投げる、捕る、打つ楽しさを知り、試合で仲間と協力して課題を解決する喜びを感じるところにある。そのためには、子どもに直接指導する教師が「ベースボール型」授業の特長を知ることが一番。研修会に参加した野球経験のない女性教師の中には「遠いところにあった野球を身近に感じ、楽しくなった」、「教え方のポイントをつかめた」と不安が和らいだ人もいる。野球部の指導経験がある男性教師からは「部活とは違って、易しく教える方法を知ることができた」という声も上がっているという。
野球未経験の教師が増えている背景には“空白の34年間”の影響がある。ベースボール型授業は1977年から21年間、姿を消した。1998年から2010年までは選択式だったが、選ばれるケースが少なかった。平田室長は「ベースボール型授業をやっていない世代が今、小学生の親になっている年代です。先生方の話を聞くと、やったことがないので教え方が分からないという声が多く出ました」と語る。
平田室長自身も学生時代から野球で育ち、野球に関わる仕事をしているため、人口の減少や野球をする環境が変わってきていることについて「元々、危機感を持っています」と語る。だからこそ、野球の良さを伝えたいという一心で、活動を行っている。
「ベースボール型」授業が小学校からなくなった期間、サッカー、バスケット、バレーなどは必修のままだった。観戦する機会はあっても、体験する場がなかった野球やソフトボールは、子どもや教師にとって、身近ではなくなった。競技人口の減少は、体育の授業の変化と無縁ではないだろう。平田室長は「将来的に野球をやる、やらないかにかかわらず、経験してもらうことが私たちにとっては貴重な機会です」と話す。
再び必修科目になってから約10年が経過した。定着し、次の10年は成果を把握する時間に充てられる。失われた34年間を取り戻すため、野球の魅力をこれからも伝えていく。