
指導者の意識に変化「アマチュア球界に商品を訴求させたい」
とはいえ、決して自分の欠点を洗い出すために使う、というものではないという。「個性を伸ばし、自分の“生きる道”を探し出せるのが大きいのです」と花城さん。実際にとある高校では、指導者が計測データをもとに投手にサイドスローへの転向を勧めたところ、当初は拒んでいた投手も納得してフォーム改造に取り組み、主戦級に育った例もあるという。
「子どもたちにとっても、数値として見せられれば納得できるし、モチベーションの向上にもつながります。漠然と練習をするよりもPDCA(計画・実行・評価・改善)をうまく回せるようになり、練習の効率化にもつながります」と花城さん。埋もれた素質を見いだし、新たな生きる道を提示し、効率良い育成につながる……。データ活用には、そうしたメリットがあるというわけだ。
他にも、モーションキャプチャーで動作解析をしたり、マルチアングルで試合映像を捉えたり、プレー映像を1球ごとに再生・分析できたりなど、様々な技術を売りとした企業が出展していたが、話を聞くと、現在はプロ球団と取引をしていても、いずれは裾野が広い「アマチュア球界に商品を訴求させたい」と口をそろえていた。
子どもたちは小さい頃から映像やデータに慣れ親しんでいる時代。さらには、アマ指導者の意識の変化も、関わりがあるという。「指導者が若い世代に入れ替わり、これまで上の世代に否定されてできなかった、映像やデータを使った練習ができるようになっていると思います。根性論も時には必要かもしれませんが、怪我の予防にとっても映像や数字、つまりは“事実”に基づいた指導は大切なことですから」と、とある企業の担当者は語ってくれた。
もちろん、数値をとるからには、それらをきちんと読み解き活用できるリテラシーは必要だが、従来の“肌感覚”の指導によって伸び悩んだり、故障につながったりするような負の流れを変え、個々の特性に合った指導・育成ができる可能性を広げてくれるのが、こうした「データ活用」だ。今後も、この新しい潮流に注目していきたい。
            
            



