中学指導者に“野球経験”は必要か? 難航する人材探しも…栗山英樹氏の提言「幅を広げて」

公開日:2025.11.15

文:宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki

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プロ・アマの垣根越えた「全日本野球サミット」で中学部活動改革について討論

 中学野球の指導者には、必ず野球の競技経験が必要なのだろうか? プロとアマチュアが共同で野球振興を進めようと、「全日本野球サミット」が15日に東京都内で初開催され、栗山英樹氏(日本ハムCBO=チーフ・ベースボール・オフィサー)、東京・早実高3年時の2006年夏の甲子園大会で優勝投手となり、早大、日本ハムでも活躍した斎藤佑樹氏らが参加した。今回のテーマは「中学部活動の支援」。王貞治氏(ソフトバンク球団会長)も来場し、熱心に耳を傾けた。

 会場は各都道府県の野球団体関係者約120人が詰めかけ、用意された席はほぼ満席で、むせ返るような熱気に満ちていた。サミット後半に行われたシンポジウムでは、中学野球や部活動改革の現状について、栗山氏がMC役となりディスカッション。中学校教員のかたわら、埼玉・川口市の中学軟式野球チーム「川口クラブ」のGMを務める武田尚大氏は「僕みたいに野球が好きで、部活動の顧問をやりたくて教員になった者もいますが、同じ職場で働く人たちがみんな同じ熱意でやっているかというと……現状としては、教員は負担に感じながら(顧問を)やっている人が多いと感じています」と率直に語った。

 日本では少子化や教員の働き方改革に対応するため、中学の部活動の指導を学校の教員から地域のクラブ・団体へ移行する取り組みが進められている。現状でも中学部活動の時間は大幅に減っており、平日は2時間、土日はいずれかを休日とし、活動する日も3時間以内に限るのが原則となっている。ただ、地域移行・展開するにしても資金面や活動場所など課題は山積しており、中でも多く聞かれるのが、顧問に代わって指導してくれる質の高い外部指導者の確保の難しさだ。

 そこで栗山氏が、1つの問題提起を行った。いわく「今どき指導者を見つけるのは大変だと思うのですが、逆に、自分が野球経験者だからこそ、間違って教えてしまうということがあると思う。プロ野球選手になった人の言うこと(指導)が正しいかというと、僕は必ずしもそうではないと思う。それより、野球をできない人が一生懸命勉強して、やり方を見つけていく方が、子どもたちを成長させる可能性がある気がしています」。

中学時代には自分でサインを出していた斎藤氏「自分で考えることが役立った」

ゲストとして登壇した王貞治氏(中央)と栗山氏、斎藤氏【写真:高橋幸司】

 これに斎藤氏も同調する。自身の中学軟式野球部時代を振り返り「2年生まではバレーボール部の顧問の先生が野球部を兼ねていて、試合では僕が全部サインを出し、ユニホームのデザインや、これくらいの予算でという発注も僕がやっていました」と明かす。「物凄く優秀な指導者に出会ってきたというより、自分で考えることが、野球人として総合的なものを育むのに役立った気がしています」とうなずいた。

 さらに栗山氏は「僕はこれまでに何人ものプロ野球選手と関わってきましたが、一流選手に『誰に教わって上手くなれた?』と聞いた時、即答できる選手はいないと思います。誰に上手くしてもらったかは誰も答えられない。たぶん、自分で上手くなったと思っているからです。そのお手伝いをするのが、指導者と呼ばれる人間の仕事ではないか」と続ける。「指導者を探すのは凄く大変ですが、もしかしたら幅を広げれば、いろいろな所に思いを持った方はいるのではないか」と強調するのだった。

 シンポジウムを傍聴した王氏も、在籍した中学に野球部が無く、地元の会社経営者がつくったクラブチームでプレーしていたという。「野球好きな人がみんなを集めて野球をやらせてくれた。そういう人がいたから、私は野球を続けられた」と史上最多の868本塁打をマークしたレジェンドは感慨深げに回顧する。そして「こういうことは自然発生的でないと続かない。47都道府県に、思いを持った人はたくさんいると思う。そういう人たちが交流し、話し合える場を増やしていけば、道は開けてくると思う」と付け加えた。

 一般社団法人日本野球機構(プロ側)と一般財団法人全日本野球協会(アマチュア側)が共同で構成する日本野球協議会が主催し、初めて開催された「全日本野球サミット」こそ今後、指導者発掘のヒントを生み出す場になっていくのかもしれない。

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