選手の“指示待ち”は指導者の責任? 脱トップダウンへ…子どもの「自主性」を育む3つの仕掛け

ノーサイン野球は実現可能か…主体性を引き出す、令和の指導者の心構え

 少年野球の現場において、選手が自ら考えて行動する「自主性」「主体性」をいかに育むかは、指導者や保護者にとって重要な課題だろう。選手が自分で判断し、決断する力を養うことは、野球技術の向上はもちろん、長期的な人間的成長にもつながるからだ。しかし、熱心な指導のあまり、つい答えを教えすぎてしまうケースは少なくない。野球界に根強いトップダウン指導から脱却し、“指示待ち”の選手を減らすためには? 強豪学童チームの指導法や、現役プロ、元プロ選手が関わるチームの指導からは、主体性を伸ばす育成の核心が見えてくる。

・指導者は答えを教えず、選手が考えるきっかけを与えることが大切。
・試合の采配や練習メニューを選手自身に決めさせ、決断の場数を踏ませる。
・米国の指導法にも通じる、問いかけを通じて選手の思考を引き出す姿勢も求められる。

 全国優勝3回の学童野球の強豪、「多賀少年野球クラブ」(滋賀)の辻正人監督は、選手の主体性を育む上で「大人が子どもを信頼してじっと待つ姿勢」が不可欠だと語る。6年生になると選手間のサインやアイコンタクトで試合を進めるようにするが、こうした文化がないチームから移籍してきた選手は、「サインがないと何をしてよいか分からない」と戸惑うという。

 辻監督は、低学年から野球の戦術や戦略を学ぶ座学を継続し、考える習慣を根付かせ、練習においても、5分間の打撃練習の使い方は選手に任せるなど、枠組みの中で自由を与え、考えるきっかけを創出している。ミスをしても頭ごなしに叱るのではなく、起こした行動をまず認める。その忍耐強い姿勢こそが、選手の積極性を引き出す土壌となる。

 DeNAの筒香嘉智外野手がオーナーを務める「和歌山橋本Atta boys(アラボーイズ)」もまた、選手の主体性を尊重する指導を徹底している。試合中のサインはなく、先発メンバーや選手交代も選手自身が決定。キャプテンも固定せず立候補制を採用し、試合ではその日のキャプテンが監督のように指示を出す。松下謙太監督は、指導者が細かく教える方が楽であると認めつつも、それは選手の考える機会を奪うことになると指摘。指導者と選手は上下関係ではなく、同じ目線に立つ「ガキ大将」のような存在が理想だと語る。

「待つ姿勢」「対等な目線」「問いかける指導」で選手の思考を促す

多賀少年野球クラブの辻正人監督(右)【写真:喜岡桜】

 元ヤクルト投手の上野啓輔氏が指導する「BIGベースボールクラブ」(東京)は、日米の野球を知る経験から「選手自身で考える」ことを重視している。練習試合では「もっと右」といった具体的な指示は出さず、「外野同士で守備位置を確認して」などと、選手間のコミュニケーションを促す声かけをする。上野さんは、社会人の部下育成法である「1on1」から着想を得て、選手に「なぜそうプレーしたのか」を問いかけ、思考を引き出すことを心がける。米国のマイナーリーグで、選手が自ら質問しなければ何も教えてもらえない環境を経験したことも、現在の指導観に大きく影響しているという。

 選手の主体性を育む指導には共通点がある。それは、監督・コーチが「教え込む」スタイルから脱却し、選手の考えを「引き出す」役割に徹すること。「待つ姿勢」「対等な目線」「問いかける指導」は、いずれも選手の思考を止めないためのアプローチだ。答えをすぐに与える方が短期的には効率が良いかもしれないが、それでは選手が自ら課題を見つけ、解決する力は育たない。選手の可能性を信じ、失敗を許容する環境を整えることが、真の成長につながる。

・指導者は答えを提示せず、選手が自ら考えるまで忍耐強く待つ。
・采配や練習方法に選手の意思を反映させ、当事者意識を持たせる。
・対話を通じて選手の考えを聞き、思考を深める手助けに徹する。

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