
中学軟式野球出身のロッテ・横山陸人、高校進学時に硬式球に慣れた秘訣とは
中学軟式野球には、硬式にはないメリットがあるという。プロ6年目の今季も勝利の方程式の一角を担い躍動しているロッテの横山陸人投手は、中学入学時に硬式野球への挑戦を検討していたが、地元の東京・江戸川区立上一色中に進学。公立校の名将で、今年4月に亡くなった元監督・西尾弘幸氏の指導を受け、後のプロ入りにつなげていった。「軟式を選んで良かったなと思います」。中2で投手に挑戦して10年、球界屈指の横手投げ右腕が、恩師との思い出と中学軟式野球の特長を語った。
「元々、中学では硬式をやりたかったんですけど、区域が合わなかったんです。それだったら上一色中で野球をやろうと。そこがたまたま軟式の野球部でした」。硬式球に少しでも早く慣れるために、小学生の頃からリトルリーグなどでプレーする選手もいる。横山にも同様の考えがあったが、結果的に「軟式で良かった」と語る。
硬式球は軟式球に比べて重く、大きさも違う。投球や打球が当たれば衝撃もより大きく「打撲とかの可能性があります」。重い分、投球にも影響がある。「まだ成長しきっていない体を考えると、肩や肘への負担もある。軟式だったので、それがほとんどなく投げられました。中学時代、大きな怪我もなかったし、そういう部分でも軟式を選んで良かったなと」。
一概には言えないものの、中学までに硬式をやっていた周囲の選手は「伸び悩んでいる子も多いと感じた」そうだ。硬式には硬式の良さ、軟式には軟式の良さがあり、横山には軟式がマッチしたのだろう。他にも「中学校の野球部だったから良かったことがいっぱいある」と強調。西尾監督が生活指導の担当だったこともあり「挨拶の大切さや人間性を自然と鍛えられました」と振り返る。
中学の3年間は「結構、濃い時間でした」。朝の授業の前には、他の生徒より15分ほど早く登校し、廊下を雑巾がけするのが野球部の役目でもあった。「そういうのも中学生からしたら結構しんどい。高校では『エンジョイして野球したいな』と思っていました」。ただ、両親の意向もあって強豪校である専大松戸高に進学。再び厳しい環境に身を置くことになった。
高校入学直後は、硬式球への戸惑いが「メチャクチャありました」というが、それでも「2、3か月ぐらいで慣れました」。その秘訣は「ボールに長く触れること」。「どうしてもボールの大きさが違うし、重さも違うので、常に握っていました。それで硬さに慣れ、怖さがなくなってくる。自主練習でもずっとボールを触ったり、軽く投げたり、とにかく触れていたので慣れるのが早かったのだと思います」と語る。
プロ入り後も続いた西尾監督との交流「一緒にお酒も」

高校では1年秋からベンチ入りし、2年秋からエース。甲子園出場こそなかったものの、3年春には関東大会で好投するなど注目を集め、2019年ドラフト4位でロッテに入団した。昨年は3勝1敗3セーブ18ホールド、防御率1.71の好成績で、プレミア12の日本代表にも選出。高校から硬式野球に挑み、高卒でプロ入りした24歳は、既にチームに欠かせない存在となっている。
西尾監督とはプロ入り後も交流が続いた。毎年1月4日、上一色中の練習始めに顔を出して新年の挨拶をするのが恒例行事。カレーの炊き出しも一緒にやってきた。「ドラフトで指名された時も連絡をいただきましたし、常に見てくれていたと思います」。定期的に焼き肉店などで食事もともにしていたという。「僕がお酒を飲めるようになってからは、西尾先生がよく行っていた居酒屋にも連れていってもらって、一緒に飲みました」。
その恩師は今年4月に死去。「野球をやっていく上での土台を作れたのが中学時代。基本的な挨拶や礼儀作法を叩き込まれました。そういうのが今、できていて良かったなと思います」。そう感謝の言葉を口にした右腕は、西尾監督の教えをかみしめるように、確固たる地位を築いた現在も「正直、まだまだ結果には満足していない」と謙虚さをのぞかせる。
「一番近くで益田(直也)さんという凄い選手を見てきている。まだたった1年や2年活躍したぐらいじゃ、全然追いつけない」。150キロを超える直球、西尾監督から教わったツーシーム以外にもカットボールやスライダーに磨きをかけ、次代の守護神を期待される中、しっかりと足元を見つめる。
今季は先発投手としての調整も経験。「ただ思い切り投げるのではなく、相手の苦手なコースをしっかり突くことも重要だと再認識できた」と収穫も多かった。「もちろん、クローザーをやりたい気持ちもあります。今の目標は、継続して活躍すること。その結果が自然とクローザーだったり、中心選手だったり、そういう存在につながってくると思います」。投手としての才能を見いだしてくれた天国の恩師に、これからもさらに成長する姿を示していく。
■横山投手が語る、上一色中時代の「投手転向秘話」
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