「パワーで負けた」経験が財産 小中学生に寄り添う女性コーチ…元プロにない“強み”

ライオンズ・レディースでプレー…山崎まり氏がアカデミーコーチ就任
小・中学生を対象にしたライオンズベースボールアカデミーは、今年から女性の指導者も採用している。大学までは男子選手と一緒にプレーし、昨年まで埼玉西武ライオンズ・レディースに所属していた山崎まりコーチも、その1人。女性指導者だからこそのメリットもあるという。
株式会社西武ライオンズが運営するライオンズベースボールアカデミーは、小学1年生から中学3年生まで、選手の野球経験や目標に合わせてクラスを設けている。指導するのは石井丈裕さんや星野智樹さんら、かつてライオンズでプレーした元選手たち。そして、ライオンズ・レディースに所属する現役選手や元選手も今年1月から加わった。
昨年まで内野手としてライオンズ・レディースでプレーしていた山崎さんは、4月からアカデミーの指導に入った。きっかけはライオンズが主催する野球教室だった。子どもたちに対する山崎さんの接し方や教え方に適性を見いだした球団関係者が、山崎さんと複数回に渡って対話を重ね、女子野球選手としての現役引退を決断したタイミングでライオンズベースボールアカデミーの指導者として活動していくことになった。自身の指導者適性について、山崎さんはこう話す。
「元プロの男性指導者よりも、小・中学生の子どもたちが直面する苦労や悩みを理解できるところが、男子選手ともプレーした経験がある私の特徴だと思います。それから、小学生は女性指導者の方が話しやすい面があると感じています」
山崎さんは学生時代、男子選手と一緒にプレーしていた。学童チームからスタートして中学でシニア、高校では硬式野球部にマネジャー登録して他の選手とともに練習したという。大学では硬式野球部に所属した。
中学時代に男子選手との差を痛感…今に生きる経験

男子選手との壁を痛感したのは中学時代だった。成長期を迎えたチームメートの体は大きくなり、パワーの差を見せつけられた。ボールが軟式から硬式に変わり、体格や筋力で勝る男子選手の方が圧倒的に有利な現実を受け入れざるを得なかった。
山崎さんは「小学生の頃はクリーンアップを任されていたのに、中学生になって一気に体が大きくなった男子選手に立場を逆転されました。甲子園常連校に進学する選手も多いシニアだったこともあってレベルが高く、3年生の最後の大会は出場機会がありませんでした」と振り返る。
努力だけでは克服できない体格の違い。それでも、山崎さんは悲観しなかった。パワーで勝てない分、打撃のコンタクト率を高める方法を追求したり、無駄のない守備の動きを研究したりした。パワー自体は男子選手より劣っても、持っている力を最大限に発揮する体の使い方も試行錯誤した。その経験は指導者になった今に生きている。
「例えば、中学から硬式を始めた選手を指導する時、バットの重さや力がうまく入らない感覚に悩んでいたり、成長がゆっくりなタイプの選手が周りとの差に焦ったりする気持ちが、自分の経験からもよく分かります。ただ、そこでパワー強化に偏ると、長所としている技術やバランスの良さを失ってしまう可能性があります。硬式に慣れて筋力がついてくれば自然と対応できると声をかけたり、長所を生かして微調整するアドバイスをしたりしています」
プロ野球チームが運営するアカデミーは、元プロ選手が高い技術や豊富な知識を子どもたちに伝えられる強みがある。一方、その前段階として、子どもたちの悩みを共有して寄り添った指導も求められる。「選手が描く目標をサポートできる指導者を目指しています。選手の意識や気持ちを大事にしていきたいです」。苦労を経験してきた山崎さんの言葉や教えは指導者としてのアドバンテージとなる。
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