14歳でチーム創設、指導歴60年…名将が危惧する“事なかれ主義”「肝心な時緊張する」

文:内田勝治 / Katsuharu Uchida

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全日本学童大会準Vの北ナニワハヤテタイガース…石橋孝史監督「褒めるだけでは伸びない」

 褒めるばかりが指導ではない。時には子どもたちに適切な声がけもしてあげることも、指導者の重要な役割だ。今年で創部60年を迎える学童野球チームの北ナニワハヤテタイガース(兵庫)は、2年連続4度目の出場となった「高円宮賜杯 第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」で、2017年大会以来、2度目の準優勝を果たした。

 弱冠14歳でチームを立ち上げ、60年間指揮を執る74歳の石橋孝史監督は、ベンチ前で見守る試合前ノックで、外野手からの返球を後逸した三塁手に「それで1点入るんやぞ!」と声をかける。その選手は、同じ失敗は繰り返すまいと表情を引き締めながら試合へと向かっていった。

「昔と比べて、肝心な時に緊張する子が増えましたね。おだててうまくなる子もいますが、そういう子は壁にぶつかった時に乗り越えることは難しいと思っています。技術的なことはもちろんですが、心理的なことも鍛えていくということを僕は大事にしています」

 もちろん罵声や怒声を浴びせ、選手を萎縮させることは御法度だが、子どもたちの将来を思っての声がけは、むしろ歓迎されるべきだ。最近は「事なかれ主義」の指導者が増えたことで、「色々なことに気づかない子どもたちが増えた」と石橋監督は危惧する。適切な声がけで、野球や日常生活に「気づき」を与えてあげることは、選手の将来にとっても有益だと言える。

「三振してもええから振り抜きなさい」…時代に合わせた戦術

1988年大会以来の優勝を目指した北ナニワハヤテタイガース【写真:内田勝治】

 石橋監督自身も、昭和、平成、そして令和にわたる指導の中で、様々なアップデートを繰り返してきた。1988年の全日本学童では、ユニホームの胸部分に刻まれる「疾風(はやて)」の名の通り、バントエンドランなどの小技や機動力を駆使して全国制覇を成し遂げたが、バットの進化が著しい昨今は、攻撃力重視に切り替えるなど、時代に合わせて戦術を変えている。

「バットが飛ぶようになったからね。子どもたちには『三振してもええから振り抜きなさい』と指導しています。素振りというよりは、ティーでタイミングを取らせながら、思い切りバットを振らせています」

 その言葉通り、今大会は猪川野球クラブ(岩手)との2回戦で17得点と圧倒的な破壊力で大勝。打線が沈黙した試合は投手陣が踏ん張り、1-0の試合が6試合中2試合と、投打でバランスのとれた好チームへと成長した。それでも、石橋監督は謙遜気味に言う。

「兵庫でもウチより強いチームはいっぱいいてますよ。1回戦で負けるのが嫌で、何とか1回だけは勝ちたかったんですけど、まあよかったです」

 2025年度からは、学童野球においてウレタン素材を使用した大人用のバットが使用禁止となり、長打の減少が予想される。石橋監督は今後も様々な策を講じながら、子どもたちにチームスローガンでもある「勝つ喜び、負ける悔しさ、明日への糧」を植え付けていく。

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