中3で遠投90m超も…正確な送球へ「小学生からやって」 日本一監督が伝える“投動作の基本”

高崎中央ポニー・倉俣徹監督が解説するスローイングの基本動作

 素早く正確に投げるには、両腕と下半身の使い方が鍵になる。今年7月に行われた中学硬式野球ポニーリーグの全日本選手権を制した「高崎中央ポニー」(群馬)の倉俣徹監督は「スローイングの基本は本当は小学生からやってほしい」と強調する。チームではキャッチボールからコンパクトなスローイングを徹底。鍛えられた守備からリズムを生み出し、同リーグ移籍1年目で頂点に立った。First-Pitchでは小学生・中学生世代で全国制覇を成し遂げた指導者を取材。どうすればスローイングが早く上達できるのか、投球ドリルを紹介した。

「肩から先は肩関節、肘関節、手首、指先の4つの関節が自由に動きます。上手く連動させて投げるには、まず肘を後ろに弓を引くように張ってトップの形を作ること。次に、リリースまで肘は肩の高さにキープすること。途中で肘が下がったり、球を持つ手が頭から離れたりすると、シュート回転したりコントロールが乱れたりします。どんなに体力があっても腕を振るスピードは上がりません」

 基本的な動作を覚えることが重要で、次に頭に入れてほしいのが“利き手と反対の手(グラブ側の手)”の動きだという。「腕を速く振るためには、テコの原理に従って、反対の手を胸の前で(引き寄せて)止めてあげるのが大事です」。右投げの場合、グラブを持つ左手を垂らしたままなど遊ばせていると、スピードは上がらない。

 倉俣監督は以前高校の体育教師を務めた経験もあり、他競技を例に分かりやすく説明する。「バレーボールのスパイクを右手で打つ時、左手がブラブラしている選手はいません。バドミントンのスマッシュもボクシングのパンチも同じ。右手と左手を逆の動きで使うと、腕の振りは速くなるんです」。右手を前に強く振りだす場合は左手を同じスピードで引き寄せ、胸の前でブロックする。「これを強く意識してほしい。野球の場合、投げる方の手だけを動かして投げようとする子がすごく多いので、癖がない小学生の時から教えてほしい。難しいことではないし、キャッチボールの徹底は小学生がやるべきこと」と訴えた。

 この理論は利き手を軸足に置き換えると、打撃にも通ずる。「右打者ならインパクトの瞬間に左膝を締める。そうすれば、力をため込んでくれるから打球がビューンと力強く飛ぶ。左膝が開いて左足の爪先が開いてしまうと、スライスした打球になります」。左膝を開かずスイングして左足の親指で踏ん張る。右足も親指に重心をかけることで理想的なスイングができる。平均台の上で素振りができれば完璧だ。

「ヘッドスピードを上げることと、腕の振りや投球スピードを上げるのは同じ理屈です。軸足や利き手と反対の方も意識しないと。運動学やスポーツ科学を学び、そういうことを教えられる指導者がチームに1人はいてほしいと思います」

回転運動の下半身を上半身の動きとリンクさせて上達

遠投を指導する倉俣徹監督(左)【写真:尾辻剛】

 話をスローイングに戻すと、上半身に加えて下半身の動きにも言及した。「(投球時に)おへそを90度回すことによって、回転運動を身につけさせます。下半身を使わず腕の力だけで投げようとする子はいっぱいいます」。その際に重要になるのは、やはり踏み出し足となる。「開かずにブロックさせる。そうすることで両足の親指の付け根で体重をコントロールすることを覚えさせる。これは回転運動の原理原則です」。

 回転運動を理解させると、次のステップに進む。軸足から踏み出し足への体重移動(並進運動)である。「体重を後ろから前に乗せ換える動きです。乗せ換えながら回転運動するという感覚を覚えさせます」。乗せ換える瞬間に、前足で地面を強く押す意識も重要だ。投げる動作は並進運動→回転運動の順番に行うが、回転運動→並進運動の順番で覚えてミックスさせたほうが、癖もつきにくいという。

「スイミングスクールではビート板を足に挟むと手の使い方を覚えられる。ビート板を手に持つと足の動きに集中できてバタ足を覚えられる」。水泳を例に、上半身と下半身の動きを別々に覚えさせ、その後に両方をミックスさせて完成につなげていると説明し、「そういう練習ドリルを取り入れる少年野球チームは少ないのではないでしょうか」と語る。

 上半身と下半身の動きがうまくリンクできると「中3になる頃には遠投で80〜90メートル、マウンドからだと球速120〜130キロを投げられるようになります。投げ方が良くなれば、後は地面をどれだけ強く押せたか。それが球に伝わります」という。高崎中央ポニーは現3年生の入学時の遠投平均が62.3メートル、2年生は58.5メートル、1年生は57.3メートルといずれも60メートル前後。これが体の成長もあって1年間で平均10メートルは伸びるという。

 9月上旬の計測では90メートル超が2、3年生で合わせて4人、80メートル超が15人もいた。90メートル投げられれば強豪校の高校1年生レベル。さすが中学日本一のチームである。

 倉俣監督は「マウンドは傾斜がある分、体重移動と回転運動がうまくリンクしない場合があるから難しい」としつつ、遠投70メートルなら球速110キロ、80メートルなら120キロ、90メートルなら130キロが投げられる目安になると説明。もちろん、そのためには上半身と下半身の動きを覚えてリンクさせることが重要だ。「それを全国の指導者が理解して普及させてくれれば、少年野球のレベルはグーンと飛躍的に上がります」。倉俣監督は10月末開催の「日本一の指導者サミット」に出演予定。願うのは野球界のさらなる発展。少年野球のさらなる充実である。

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