
元侍ジャパンスコアラー・志田宗大氏が懸念…中学生の入射角度は“大谷並み”
「上から叩け」なのか、「下からすくい上げろ」なのか……。打撃理論における永遠の命題において、元ヤクルト外野手で、侍ジャパンのスコアラーなどを務めた志田宗大さんがデータとプロの知見を交えて一石を投じた。現在、プロ球団にデータ分析システムなどを提供するライブリッツの社員で、野球アナリストとしても活躍する志田さんは3月1日、オンラインイベントに登壇。懸念しているのは、現代のトレンドである「アッパースイング」への過度な傾倒だ。
中学生237人、約4600球の打球を計測したところ、インパクト時におけるバットの芯付近の入射角度(アタックアングル)の平均は14度。しかも約半数の119人が15度以上だという。これは大谷翔平(ドジャース)の15度、アーロン・ジャッジ(ヤンキース)の14度に匹敵、またはそれ以上の数値だ。ちなみにメジャー通算183本塁打のブラディミール・ゲレーロJr.(ブルージェイズ)は、ほぼ水平の状態(1度)でボールを捉えている。
「数値だけを見れば、中学生がメジャーリーガーと同等の角度で打っていることになります。しかし、小、中学生のステージでは、そもそも投手のボールがお辞儀しているので、下から出すアッパー軌道が合う可能性があります」
つまり、中学までは過度なアッパースイングでも十分対応できる傾向にある。しかし、その成功体験こそが、上のステージへ進むにつれ障壁になるという。
「高校、大学、社会人と、プロと投手のレベルが上がるにつれ、ボールの質が上がります。特にアタックアングルが20度を超えると、打球速度が落ちる傾向にあることも分かっています。そうなると、これまで通用していた深いアッパー軌道では対応に苦慮することになります。その結果、活躍が一過性で終わるのが、アッパースイング選手の現実です」
好ましい3段階スイング「スタートは上からの感覚でちょうどいい」

では、どのようなスイングを目指すべきなのか。志田さんは、ワンスイングを「ダウン」「レベル」「アッパー」の3段階で捉えることが好ましいと主張する。
「バットが始動してからインパクトまでの時間は、わずか0秒05しかありません。その中で、人間が意識的にコントロールできるのはスタートの瞬間だけです。インパクトに関してはどんな選手でも結果的にはアッパーで入ることを考えると、スタートはやや上からという感覚で、結果的にちょうどいいスイング軌道、アタックアングルになります。決してアッパースイングや、現代の打撃理論を否定しているわけではありませんが、ゲレーロJr.選手のように、MLBで最も浅い角度でもしっかりと結果を残すことができることを理解していただきたいです」
最初からすくい上げる気持ちで臨めば、結果としてアッパー角が深くなり、捉えたとしても打球速度が上がらず、抜けたと思った打球が捕られてしまう。まずはダウンスイングを意識することが、スイング軌道の再現性向上にもつながる。データを携え、世界を相手に戦った志田さんだからこそ、その言葉には説得力がある。
○志田宗大(しだ・むねひろ)
ヤクルトの外野手として9年間活躍した後、2011年からヤクルトで、2018年からは巨人でスコアラーを歴任。2017年のWBCでは、侍ジャパン(日本代表)のスコアラーとして選手たちの活躍をデータ面から支えた「分析のスペシャリスト」。2026年にライブリッツ株式会社に入社。過去の経験を活かし、データを元に野球指導を行う「FastBall for personal」を担当。
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