「ストライクゾーンが分かってない」子が多数 早実V主将指摘…“内から出せ”指導の弊害

文:尾辻剛 / Go Otsuji

XFacebookLineHatena

2006年夏の甲子園で優勝…早実の主将・後藤貴司氏が指摘する“誤った素振り”

 野球を練習する際の基本である素振り。だが、スイングの際に内角ばかりを振る子どもが多いという。2006年夏の甲子園で優勝した早実(西東京)で主将を務めた後藤貴司氏は少年野球を指導したことがあり、子どもたちのスイングの“傾向”に気が付いた。

「自分のストライクゾーンが分かっていないことが結構あるんです。自分がスイングしていると思っているコースが、周りから見たらズレている。インコースを振っているのに、本人は『真ん中を振っている』と言い張っているんですよ。自分の感覚と動きが明らかに合っていない。そういう子どもが多いんです」

 少年野球でありがちなのが「バットを内から出せ」「肘を畳んで振れ」という指示。「子どもに『内から出せ』と言っても、まだ難しくて分からないものです。そう言われてインコースだけスイングしているジュニアのアスリートって結構いるんですよ」。

“弊害”はそれだけではない。「意識が腕に集中して、腕だけでバットコントロールしようとする。そうすると、当たるけど強い打球は飛ばせません。自分の感覚と動きが合っていないエラー動作を続けていると、変な癖が体にインプットされてしまいます」。まずは細かいことは気にせず、思い切り振り抜くことが大切なのである。

 感覚のズレを直す方法として、動画撮影を推奨する。「後ろ、前、横、背中側からと、あらゆる方向から撮ります」。ホームベースを置き、周囲にも見てもらいながら色々なコースをスイングしてもらう。真ん中を振っているつもりでも、実際には内角を振っているケースが多いという。

動画を撮り「ズレを認識させる」…投手方向を見るのも大事

中学生に指導をする後藤氏【写真:本人提供】

「分かりやすく可視化することが大事なんです。まずは動画を撮って、見せるところから始めます。ズレを自分で認識することがスタートです。そこから本人が調整していく。それを繰り返して『ここが真ん中なんだ』と分かってもらうんです」。打者が最も打ちにくい外角低めに対しても同様の作業を行う。「繰り返すうちに、動きと感覚がだんだん合ってきます。その積み重ねです」。

 淡々と反復することに加え、スイングする際のルーティンも決めるという。まず、構えた際に投手方向を見る。スイングの瞬間にぼんやりと視線をミートポイントに持っていく。「素振りではミートポイントだけ見ている子が多い。投手を見て、ボールが来るのをイメージしながらぼんやりミートポイントに目を持っていきスイングするんです」。練習のための練習ではなく、試合で打つための練習でなければ意味がないのである。

 東京六大学野球の早大、社会人野球の日本製紙石巻での現役生活を経て、現在は外資系の大手生命保険会社に勤めている後藤氏。個人的に顧客の子どもに助言するところから始まり、その子が所属するチームで指導することもあるという。「子どもに教えるのは難しいです。可視化するのが理解しやすいし、一番じゃないでしょうか」。

 まずはどのコースを振っているのか理解すること。「試合になるとどうしてもズレるんですけどね……」。実戦での対応は難易度が上がるが、まずは素振りでイメージと動きのズレを合わせる作業が上達の第一歩となる。

少年野球の現場を熟知するコーチが参加…無料登録で指導・育成動画250本以上が見放題

 野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」(ターニングポイント)では、無料登録だけでも250本以上の指導・育成動画が見放題。First-Pitchと連動し、小・中学生の育成年代を熟知する指導者や、元プロ野球選手、トップ選手を育成した指導者が、最先端の理論などをもとにした、合理的かつ確実に上達する独自の練習法・考え方を紹介しています。

■専門家70人以上が参戦「TURNING POINT」とは?

■TURNING POINTへの無料登録はこちら

https://id.creative2.co.jp/entry

トレンドワード