子どもたちが自由にプレーできる環境を…少年野球の「移籍」が事実上解禁に

公開日:2022.07.12

更新日:2025.02.26

文:間淳 / Jun Aida

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全軟連の小林専務理事「子どもが自由に野球できない状況を変える」

 全日本軟式野球連盟(全軟連)が、長年議論になっていた「移籍問題」の改革に乗り出した。少年野球では原則認められていなかった連盟規定を7月8日に改訂し、年度内の移籍を事実上認めた。解釈に違いがあったルールを明文化した形だ。野球を続けたいのにプレーできない、指導者と合わないのに野球を続けるためにはチームを離れられないという現状は変わるのだろうか。

 時代が変われば、価値観や考え方は変化する。少年野球でも球数制限や怒声罵声の禁止など、かつての常識が見直されている。

 長年議論になっている問題に「移籍制度」がある。全軟連はこれまで、選手のチーム移籍について「基本的に特別な理由がない限り、年度内の移籍登録はできない」としていた。つまり、チームから離れた選手は、最長1年近くプレーする場を失う。さらに新しいチームに移籍しても、旧チームが移籍選手の登録を抹消しなければ、選手は新旧チームの二重登録となり試合に出場できない。この足かせから、子どもたちは不満があってもチームに残って野球を続けるか、野球を辞めるかの選択を迫られていた。

 選手がプレーする環境を整えるため、全軟連も議論を重ねてきた。そして、外部の専門家らを交えた委員会で「移籍の解釈を統一すべき」との結論に達し、7月8日に開催された理事会で承認。連盟規定を「年度内は選手等の異動を原則禁止する。ただし、転居及びその他考慮すべき特別な理由を有する場合はこの限りではない」と7月8日付で改訂した。全軟連の小林三郎専務理事は「子どもたちが束縛されて、自由に野球ができない状況は変える必要があります」と改訂の理由を説明した。

「考慮すべき特別な理由」と判断されれば移籍容認

全日本軟式野球連盟・小林三郎専務理事【写真:間淳】

 考慮すべき特別な理由とは、引っ越しや転校、指導者によるハラスメント被害を想定している。いわば、子どもたちが野球を続けるための「通常の理由」だ。選手登録を受け付ける各都道府県の支部や下部組織が「通常の理由」と判断すれば、移籍は認められる。移籍に関する規定には「年度内は選手等の異動を原則禁止する」という文言が冒頭に残ったものの、事実上の移籍容認を意味する。

 制度改定により、理不尽な理由で選手登録を抹消せず、移籍を妨害してきたような、不当に選手の移籍を認めないチームに対応する。小林専務理事は「現場で問題が解決しないのであれば、子どもたちがより良い環境で野球ができるように我々がルールをつくっていきます」と語った。

 移籍を禁止する制度は元々、選手の引き抜きとチームの渡り歩きを防止するために設けられた。特定のチームが、能力の高い選手を中心に、別のチームから移籍させるケースがあったためだ。大人の事情でチーム力に差が生まれたり、選手を引き抜かれたチームがメンバー不足で廃部に追い込まれたりした。だが、今は移籍を禁止する制度が、子どものプレーする場を奪う弊害となっている。ただし、移籍の規制緩和は子どもたちに正しい野球環境を提供するのが目的であり、当然ながら特定のチームによる選手の引き抜きを容認するわけではない。全軟連は「指導者には、選手の将来を第一に考えた指導にあたってほしいという前提がある」としている。

 全ての指導者や保護者が子どもの意思を尊重したり、子どもの将来を考えたりすれば、本来ルールは必要ないだろう。ただ、そうではない現実がある以上、全軟連の改革に期待するしかない。

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