4時間睡眠で「燃え尽きた」 一時引退→競技転向も…描いたプロ野球への“最短ルート”

更新日:2026.10.13

文:磯田健太郎 / Kentaro Isoda

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横浜、日本ハムでプレー…スキルコーチ・アナリストとして活躍する関口雄大さん

 スター選手のようなスポットライトを浴びなくとも、野球界の発展のために尽力する人々がいる。紹介するのは、横浜(現DeNA)、日本ハムでプレーし、現在は「エイジェックスポーツ科学総合センター」で、スキルコーチ・アナリストを務める関口雄大さんだ。無名の県立高、国立大からプロへの道を志した理由とは。“裏方”から野球界を支える思いとは。

 関口さんは栃木県宇都宮市に生まれ、父親の影響で小学2年生から、地元のチーム「石井学童野球部」で野球を始めた。中学は硬式の「宇都宮リトルシニア」を経て、県立宇都宮北高へ進んだ。しかし、大きな苦難に直面する。

「偏差値だけで学校を選んだので野球部のリサーチを全くしていなくて、面食らいました」。早朝5時半から朝練を行い、放課後の練習は午後10時まで続いた。自転車で片道40分かけて帰宅し、次の日もまた4時ごろに起床、睡眠時間は毎日4時間ほどだった。「ブラック企業並みのスケジュールですね」と関口さんは語る。

 成長期とは思えない睡眠時間に、体は悲鳴をあげていた。「回復が追いつかないのでずっと肘が痛くて、175センチくらいの67キロでガリガリでした。今思い返せば、体作りをちゃんとやっていれば、もっと活躍できたかなという後悔はありますね」と明かす。

 猛練習に明け暮れた3年間を経て、国立の滋賀大学に合格した。しかし、“燃え尽き症候群”のようになったことから、野球からは離れ、1年生の8月ごろまではバドミントン部で活動し、2か月ほどラグビー部にも掛け持ちで在籍した。

 大学生活で睡眠時間をきちんと確保できたことで、バドミントンのラケットを振っても肘に痛みを感じず、ラグビー部で下半身も強化されていた。そこで、高校時代とは正反対に和気あいあいと活動する硬式野球部の様子を目にし、体験入部を経て野球を再開した。

 すると、めきめきと頭角を現し中心選手になった。3年時には「大学野球関西オールスター5リーグ対抗戦」に京滋大学野球連盟から選出されると、これがプロ入りへの大きな転機となる。

「近大の大隣憲司さん(元ソフトバンク、ロッテ)が選ばれていて、たくさんのスカウトが見に来ていたんです。楽しい野球がしたくて大学でも再開しましたが、このレベルでプレーできているなら、頑張ればプロに手が届くかもしれないという実感が湧きました」

 大会後、すぐにプロ入りに向けて“最短ルート”を考え抜いた。広島、横浜、日本ハムの入団テストの情報を入手し、対策を練った。50メートル走は陸上競技の書籍を参考に、フォームを見直した。遠投は投げたボールの回転軸を自分で確認し、より伸びの良い球質になるよう研究した。すると横浜の入団テストで対策が実り合格、2007年のドラフトで育成1位として指名され、プロの世界に飛び込んだ。

裏方13年→地元へUターン…擦り合わせる「主観と客観の違い」

小学生から社会人まで幅広い世代を指導する【写真:磯田健太郎】

 2年目の2009年に初出場を果たすと、初安打も放った。オフに日本ハムへ交換トレードで移籍し3年間プレー。怪我の影響もあり、2012年限りで引退を決断した。引退後は球団に残り、用具担当を経験した後に、アナリスト・スコアラーを務めた。

「スコアラーになったのは、パソコン作業が得意だっただけなんですけどね」と笑うが、横浜時代には低迷するチームの立て直し案をレポートにまとめ、球団に提出したこともあるといい“分析力”の素養は備わっていたのだろう。2015年から計測機器の「トラックマン」が導入されると、元々セイバーメトリクスや動作解析に興味を持っていたこともあり、豊富な知識で選手とデータの架け橋に。2016年の日本一や、近藤健介外野手(現ソフトバンク)、大谷翔平投手(ドジャース)のブレークを後押しした。

 2025年限りで日本ハムを退団し、現在は地元・栃木県の「エイジェックスポーツ科学総合センター」で、スキルコーチ・アナリストとして活躍する。指導するのは小学生から社会人まで幅広い。様々なエラー動作を抱えた選手が、上達のヒントを得ようと門を叩く。

 アマチュア選手、特に小中学生の選手は、本人の想定しているプレーと実際の動きの乖離が大きいことや、基本的な動作ができていないことも多い。関口さんは「主観と客観の違いはあるものだと思っています。その上でいい結果を出せる動作になれるように、声掛けを工夫したり、ドリルを処方したり、その子に合った形を一緒に探して組み立てることを大切にしています」。

「ずっと続けてきた野球で飯を何年も食べられるのは、球界発展に貢献されてきた先輩方のおかげでもあります。非常に幸せなことだなと思います」と謙虚に話す関口さん。一時は断念しかけた野球界で、選手として、裏方として、長年活躍し続けられる喜びがにじむような言葉だった。

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