本塁打でも大勝でも“叱る”ワケ 親は不満でも…強豪監督が定めたチームの「褒める基準」

公開日:2025.09.29

文:間淳 / Jun Aida

XFacebookLineHatena

今夏の全国大会出場、山梨・甲斐JBC監督はランニング本塁打で走塁チェック

 本塁打を放ってもハイタッチで迎えられるとは限らない。今夏に「高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会 マクドナルド・トーナメント」に出場した山梨・甲斐JBC(ジュニアベースボールクラブ)の中込裕貴監督には、選手を褒める明確な基準がある。選手が本塁打を放っても、チームがコールド勝ちしても、厳しい言葉を飛ばすケースがあるという。

 ランニング本塁打を放った選手は、ベンチに戻ると指導者から拍手やハイタッチで迎えられるのが一般的な光景だろう。ところが、甲斐JBCの中込監督の表情はさえない時があるという。その理由を明かす。

「ベースランニングに無駄があったり、力を抜いた走塁を見せたりすれば、選手を叱ります。他のチームで本塁打を打った選手が叱られることは、あり得ないかもしれませんね」

 中込監督が結果だけではなく、そこに至るまでの過程を評価の対象とするのは、選手やチームが掲げた目標があるからだ。甲斐JBCの選手たちは甲子園出場やプロ野球選手を目指し、チームは「全国1勝」を掲げている。目標を言葉だけで終わらせず、実現の後押しやサポートこそが指導者の役割と中込監督は考えている。

「ベースランニングに無駄があれば、上のレベルに行った時、本塁でアウトになったり、三塁打になったりします。1歩、2歩の差が勝敗を左右するわけです。目標を達成するために必要なプレーの基準を満たしていない場合は、たとえ本塁打であっても厳しく指摘します」

個々の選手を細かく観察…成長を褒めて評価

細かい観察を欠かさないという甲斐JBC・中込裕貴監督(中央)【写真:間淳】

 ランニング本塁打という結果は、もちろん素晴らしい。ただ、指揮官には評価の基準があるのだ。打撃以外でもファインプレーや奪三振など、結果だけで褒めることはない。1歩目の動きの良さによって生まれたファインプレーや、思い切り腕を振ってベストボールを投げ込んだ上の三振ならば、目いっぱい選手を褒める。一方、大勝でコールド勝ちしても、全国で1勝できる勝ち方でなければ指揮官の言葉は厳しくなる。

「保護者はコールドで勝った試合で、なぜ監督は選手を叱るのかと疑問や不満があるかもしれません。でも、点差は関係ありません。自分たちのやるべきことができているのか。相手の自滅のような他力ではなく、自分たちの力で得点したのかを見ているわけです」

 全国1勝の目標にふさわしいプレーや判断ができた時に加えて、中込監督が選手を褒める基準がもう1つある。それは、個々の選手に努力の成果が見られた時だ。

「小学生には体格や経験の差があります。運動能力や理解力も、それぞれ異なります。個々の選手が1つ壁を乗り越えたと感じた時は、手放しで褒めます。そのために、選手の成長を見逃さないように全ての選手をしっかりと観察しています。何が得意で何が苦手なのか。体の使い方やプレーにどんな特徴があるのか。全員について詳しく語れる自信があります」

 指導者から理不尽に叱られれば、その言葉は選手に届かない。だが、指導者が評価の基準を明確にして選手と共有していれば、厳しい指摘であっても互いの信頼関係は崩れない。

少年野球の現場を熟知するコーチが参加…無料登録で指導・育成動画250本以上が見放題

 野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」(ターニングポイント)では、無料登録だけでも250本以上の指導・育成動画が見放題。First-Pitchと連動し、小・中学生の育成年代を熟知する指導者や、元プロ野球選手、トップ選手を育成した指導者が、最先端の理論などをもとにした、合理的かつ確実に上達する独自の練習法・考え方を紹介しています。

■専門家70人以上が参戦「TURNING POINT」とは?

■TURNING POINTへの無料登録はこちら

https://id.creative2.co.jp/entry

トレンドワード