高2で球速140キロ台“大幅アップ” 軟式で得た感覚…DeNA21歳を勇気づけた「名将の予言」

文:宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki

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DeNA・深沢鳳介が語る、上一色中軟式野球部時代の恩師・西尾弘幸監督の慧眼

 中学では軟式か、硬式か、どちらを選ぶべきか。どんな基準で進学先の高校を選択すべきか。中学時代に軟式野球でプレーした選手が、高校で硬式球を握る際に注意すべきことは何か。野球に懸ける中高生の悩みは尽きない。東京・江戸川区立上一色中時代に“中学軟式野球の名将”西尾弘幸さん(今年4月30日に死去)の教えを受け、現在DeNA4年目の21歳で若手成長株として期待される深沢鳳介投手に聞いた。

 小1から軟式チームで野球を始めた深沢は、当初内野手。中学では地元の硬式チームに入団する選択肢もあったが、軟式野球の強豪として知られる上一色中の野球部でプレーする道を選んだ。「当時の僕はクラスで背の低い方から数えた方が早いくらい小柄でした。硬式では肘や肩に負担がかかり過ぎるのではないかと思いました。また、結果的に、軟球の表面には凹凸があって、指にしっかりかけて投げる感覚をつかむことができたと思っています。それは野球をやっていく上で、結構大事な感覚かなと思います」と語る。

 中2の秋、コントロールの良さが西尾さんの目に留まり投手転向。3年の時にはエースとして関東大会優勝、全国中学校軟式野球大会ベスト4入りなどの実績を残した。そして誘いがあった中から千葉・専大松戸高に進学したが、進路選択にも西尾さんのアドバイスが影響していた。

「西尾先生は『(専大松戸に)絶対行った方がいい。おまえに合っている』と言ってくださいました」と深沢。「自宅から電車を乗り継ぎ、片道1時間くらいで通えます。当時の僕は友達ともあまりしゃべらないくらい内気で、寮生活で他人に合わせることがストレスになりそうでした。西尾先生にはお見通しだったようです」と笑う。選手の性格に合った高校を選ばせることは、何より大事だ。

 ただ、深沢は高校進学後、悩みを抱えることになる。「高校に行けば球速も上がるものだと思っていたのですが、全然ダメでした」。卒業後も毎年正月に上一色中を訪れ、西尾さんに相談事をしたり、ピッチングを見てもらったりしていたといい、恩師からは「無理に球速を上げようとするな。体をつくり、ウエートトレーニングをやっていけば、自然に上がってくる。あくまでコントロールを大事にしなさい」と言い聞かされたという。

ひと冬でMAX137→143キロへ大幅アップ、開けたプロへの道

上一色中で監督を務めた西尾弘幸氏【写真:伊藤賢汰】

 西尾さんの“予言”は的中する。高2の冬、最高球速は137キロから一気に143キロへアップ。もちろん、持ち味の制球力にも乱れはなかった。高3春の選抜大会では、初戦で愛知・中京大中京高に零封負けを喫するも、自身は8回3安打2失点の快投。同年夏には、甲子園1回戦で大分・明豊高を9回11奪三振完封。プロへの道も開けた。

 西尾さんについて「中学時代は怖いというイメージでしたが、中学の野球部を引退してからも親身になって相談に乗っていただき、生徒のことを凄く考えてくれていたのだなと気づきました」と感慨深げに振り返る。技術科教員で生活指導担当でもあり、「学業では『2は取るな』と言われていました。終業式のたびに通知表を持って西尾先生の所へ行き、よく叱られました」と苦笑した。

 2021年ドラフト5位でDeNA入り。昨年は精密な制球力を評価され1軍の開幕ローテ候補に挙げられながら、オープン戦で右肘痛を発症。トミー・ジョン手術を受けた。それでも今年6月12日、イースタン・リーグのロッテ戦にリリーフ登板し、約1年3か月ぶりに実戦復帰。天国の恩師へ、1軍で活躍する姿を見せることを心に誓っている。

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