「簡単なことも当たり前じゃない」 工夫凝らし全国出場…障がい者野球の監督が伝える“本質”

身体、知的など障がいの種類を問わない兵庫県の野球チーム「ダンデライオンズ」
野球を楽しみながら、少しでもうまくプレーしたい。そんな球児たちの思いを叶える“環境”を提供しているのが、身体、知的など障がいの種類を問わない兵庫県の野球チーム「ダンデライオンズ」だ。監督を務める井上聞三さんは、サポート役の指導者らとともに工夫を凝らした練習方法で選手の成長を後押ししている。
ダンデライオンズの選手層は小学生から50代までと幅広い。片手の欠損や麻痺が残る選手、指示を理解するのが苦手な選手など障がいの種類は様々だが、グラウンドに集まった選手たちの取り組む姿勢、熱意は誰にも負けない。
過去に中学野球部の顧問を務めていた井上監督は「周りから見て簡単なことでも、この子たちにとっては当たり前じゃない。ルールも他のスポーツに比べ難しい部分はあるので少しずつ理解してくれればいい」と口にする。両手での捕球、両手でのバットスイング、内外野の掛け声など——。それぞれが自分の体に合うやり方を見つけなければならない。
プレー中に最も難しいのが、聴覚障がいの選手とのコミュニケーションだという。「野球は声が大事とも言われます。フライが上がって『オーライ、任せた』ができない。ジェスチャーも2人なら難しい。距離などでアイコンタクトを取りながら。指導者としては難しいですが、それもやりがいを感じるところですね」。
人前で自分を出すことが苦手な子も「好きな場所なら克服できる」

打撃練習でもバットになかなか当たらない選手には、軟式球より大きいソフトボールで“当たる楽しさ”を身につけさせる。ボールが硬くて怖がる子にはテニスボールやゴムボールなども使用する。試合形式の練習では聴覚障がいを持つ選手に向けボードで指示を出す。その時々で見つかった課題を、選手と一緒になって解決していくスタイルだ。
ただ、井上監督が野球の技術以上に大切にしているのが、心を鍛えること。難しいプレーに挑戦する、試合で緊張感ある場面を乗り越える、円陣では先頭に立ち声を出す——。グラウンドで見せる選手たちの表情、言動は常にチェックしている。
「この子たちは普段、緊張する場面を味わうことが少ない。人前で自分を出すことが苦手な子も多いです。根拠があるわけじゃないですが、試合に出るだけでも精神面は鍛えることができるのではないか。打席に立つ、マウンドに上がる、1つのアウトを取る。野球という好きな場所なら克服できる。少しずつ自信が生まれていると思います」
チームは5月17日にほっと神戸で行われる「全国身体障害者野球大会」に初出場する。「興奮と緊張で舞い上がると思います。でも、それも経験。絶対にプラスになる」と井上監督。プロ野球選手たちも使用する球場でプレーすることで、選手たちがまた一つ成長してくれると願っている。
少年野球の現場を熟知するコーチが参加…無料登録で指導・育成動画250本以上が見放題
野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」(ターニングポイント)では、無料登録だけでも250本以上の指導・育成動画が見放題。First-Pitchと連動し、小・中学生の育成年代を熟知する指導者や、元プロ野球選手、トップ選手を育成した指導者が、最先端の理論などをもとにした、合理的かつ確実に上達する独自の練習法・考え方を紹介しています。
専門家70人以上が参戦「TURNING POINT」とは?
TURNING POINTへの無料登録はこちら