ジャイアンツアカデミーのコーチとして現在は子供たちに野球の楽しさを伝える

「アカデミーで心がけているのは、自分勝手に話をせずに、相手の目線に立って話をすることです。野球の技術を言葉にするのは最初は難しかったです。今はすごく楽しい。積極的に聞いてきてくれたり、言ったことが伝わると楽しいです」

 これまで感覚でやっていた野球を、言葉に表現して、相手に伝えることは容易ではない。でもプロという高いレベルにいたからこそ、伝えられることもある。

「子供の質問にはさすがに全て答えられます! バットの使い方の質問をされても、こうやって体を使うんだよ、と違う視点からアプローチをしてあげたりすると答えが導き出せます。そういうことを心がけていますね」

 引退して2年が経った。ふと視線を上げると東京ドームの屋根が見えた。
 
「ジャイアンツのユニホームを着て、4、5万人の前でプレーさせてもらっていたんですよね。すごいことをしていたんだなと思います。自分は活躍できませんでした。当たり前ですが、もう現役選手に戻れない。どんな形であれ、チームや選手のサポートをして、自分のような悔しい思いを持ってユニホームを脱ぐ選手が少なくなってもらえればいいなと思います」

 プロだった時代がすべてではない。辻さんの進む道はまだずっと長く続いていく。誇りを胸に、今日も子供たちの笑顔に会いに行く。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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