
日本一をつかんだ“準備力”…ウオーミングアップを重視する「愛知尾州ボーイズ」
ウオーミングアップを、より効果的に――。中学硬式野球の「愛知尾州ボーイズ」(以下、愛知尾州)は今年3月、「スターゼンカップ 第55回日本少年野球春季全国大会」で初優勝を果たし、ボーイズリーグの頂点に立った。その栄光の裏にあったのは、誰の目にも映りにくい“下支え”。強さの源泉として、ウオーミングアップに組み込まれたトレーニングがあるという。First-Pitchでは小学生・中学生世代で全国制覇を成し遂げた指導者を取材。チームトレーナーの渡辺雅久氏は「アップしながら強化、技術を上げることを目指しています」と語る。
技術の高さもさることながら、それ以上に選手一人ひとりの身体を支える“見えない準備力”が栄光を手繰り寄せた。愛知尾州では、アップとトレーニングを分離せず、むしろ統合する発想を取り入れている。普段は会社員として働きながら、愛知尾州だけでなく男女の高校野球部やバスケットボール部などでも指導する、渡辺トレーナーが担当するアップは1時間近くを要する。
軽いランニングをした後、腹筋や腕立てなど自重を使いながら動きを加えた体幹トレーニングから始まる。両足を上げた状態から速いテンポでの腹筋や、腕立ての体勢からのジャンプなど内容は様々だ。その後、ジャンプ系、ダッシュ系の練習に移る。最後には盗塁やタッチアップなど実戦を想定したメニューを組み込むなど、あくまで試合につながる動きを意識する。
1時間かけて丁寧に組み立てることで、アップだけでも選手の体に負荷をしっかり与えながら、動きを作る意図を持たせられる。渡辺トレーナーは「試合前だとアップの時間は20分ほどしかないのですが、そこの精度を上げて通年やることで、アップしながら強化、技術を上げることを目指しています」と説く。
さらにノック時もグループ分けをして、トレーニングをする組を作っている。藤川正樹監督は「ノックなどの技術練習よりもトレーニングの方が多いかもしれないですね」と語るほど、フィジカルを重視。さらに「基本的にはダッシュを何十本もやったり、長距離を走らせたりということはしないですね」と、より効率的な練習を目指している。
「ランニングは無しでもいい」…それでもメニューから外さない理由

渡辺トレーナーはかつて、ただ走るような長いだけのアップに疑問を抱いていたという。「こんなにやって意味があるのか、逆に疲れてパフォーマンスが低下するのではないか」。その反省を踏まえ、現在は「正しいパフォーマンスを発揮するための準備」の観点からメニューを組む。神経系を刺激し、動作のスイッチを入れることこそが、ウオーミングアップの本質と位置づけている。
ランニングも必ずしも必要ではないかもしれない。そう説く渡辺トレーナーだが、完全に廃止するわけではない。選手たちは練習開始時に集団で、掛け声をかけながらグラウンドを回る。「正直、ランニングは無しでもいいと思っています。でも、藤川監督に尋ねた時にその大事さについて教わりました。スイッチの切り替えにもなるんだと。“気合いの一致”という言い方をしていますが、足をそろえて『今からやるぞ』という気持ちを統一することは大事だと思います。ただし、多く走らせることはしていません」。効率より大事なものも、確かに時には必要になる。
アップのメニューには、選手の自律を大切にする意図も込められている。「いかに選手たちが、メニューを平日の練習がない日に家でやってくれるか。そこが大事だと思います」と渡辺トレーナー。だからこそ、きつすぎず複雑すぎないレベルの構成にしている。これには藤川監督も「種目を覚えて家でやる選手もいて、そういう選手はどんどんうまくなりますね」と効果を語る。
「尾州ボーイズの選手たちは、めちゃくちゃキラキラしているので、吸収力がハンパじゃないですね。本当に上を目指してやっているのが分かります」と渡辺トレーナー。最後は選手たちの取り組み次第。自主性が強さを支えている。
ウオーミングアップとは、ただ体を温めるだけの時間ではない。動きを鍛え、技術を支え、勝利を呼び込むための戦略も込められている。静かな時間を強さへと昇華させる指導哲学を根付かせている愛知尾州ボーイズ。10月末開催の「日本一の指導者サミット」で、藤川監督がその哲学の一端を語ってくれる。
【実際の動画】自重トレ→ジャンプ→ダッシュ系で身体&技術強化 愛知尾州ボーイズの“1時間ウオームアップ”
【動画】
— First-Pitch -野球育成悩み解決サイト-【by Full-Count】 (@FirstPitchC2) October 9, 2025
今春日本一、愛知尾州ボーイズのウオーミングアップの様子
自重トレ、ジャンプ系、ダッシュ系と1時間もかけ実施⏰
「試合を想定した動き」で身体強化と技術向上を両立させているそうです👀
「日本一の指導者サミット2025」詳細は👇https://t.co/mVMUPHWaGU#少年野球 #拡がれ女子野球 pic.twitter.com/HjWPD0MunJ
ボーイズリーグで全国制覇…愛知尾州ボーイズの指導・練習法を紹介!
Full-Count、First-Pitchと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では、10月27日から5夜連続でオンラインイベント「日本一の指導者サミット2025」を開催します。小学生・中学生の各野球カテゴリーで全国優勝経験がある全11チームの少年野球監督を招き、日本一に至るまでの指導方針や独自の練習方法について紹介していきます。参加費は無料。登場予定チームなどの詳細は以下のページまで。
【日本一の指導者サミット2025・詳細】
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