今や希少な両打ち…育成を妨げる“決めつけ” 日米2705安打者が願う後継者「遊び感覚から」

両打ちで日米通算2705安打…松井稼頭央氏が“スイッチヒッター”育成に言及
両打ち育成はできるだけ早い方がいい——。「サンリオベースボールアカデミー in ジャイアンツタウンスタジアム」が15日、東京都稲城市で開催され、前西武監督の松井稼頭央氏らが講師として参加した。現役時代は両打ちで日本選手最多の日米通算2705安打をマーク。数々の記録を打ち立てたレジェンドが、現在は少なくなっている両打ち選手の育成に言及した。
東京と神奈川の女子小学生203人が参加した野球教室。全選手を前にした打撃指導の際、松井氏は「この中でスイッチヒッター(両打ち)はいる?」と問いかけると、2人の選手が手を挙げた。「今の時代は右なら右、左なら左としっかり分かれています。それだけスイッチは難しいんですけど、その中でも2人いたのは凄くうれしいですね」。
基本的に右投手に対する時は左打席、左投手の時は右打席で打つのがスイッチヒッター。両方の打席で同じような高いパフォーマンスが求められるため、育成は簡単ではない。片方の打席だけの選手に比べて単純に2倍の練習量が必要となる。練習量が増えると体への負担が増え、怪我の危険性が増す。足が速いと早くから左打ちとなる選手は多い。データ分析が進み、左右どちらかに専念する選手も増えている。
松井氏はPL学園時代、投手として1年春からベンチ入り。1993年ドラフト3位で西武に入団すると野手に転向した。当初は右打ちだったが両打ちに挑戦。元々のセンスに加えて猛練習でモノにすると2年目の1995年に1軍初出場を果たした。翌1996年から遊撃のレギュラーに定着し、2002年には打率.332、36本塁打、33盗塁でスイッチヒッターとして史上初のトリプルスリーを達成。1試合での左右両打席本塁打も3度記録するなど、球史に残るスイッチヒッターだった。
「僕はスイッチにしたのがプロに入ってからなので、小学生の頃にやっていなかった分、何とも言えない部分はありますけど、もっと若い時からやった方がいいと思います。少しでも早い時期から取り組んだ方が身につくのではないでしょうか。もし、必要がなくなったり、どちらか一方を伸ばしたくなったりしたら、その時はどちらかに絞ってもいいですし、続けられるのなら続ければいい」
杉谷拳士氏「僕が一番教わりたかった」

習得が難しい分、早くから着手すべきというのは経験者として当然の考えだろう。もしも小学生から取り組むなら、最初は「遊びくらいの感覚でやっていいと思います」という。頑張りすぎず、楽しんで覚えればいい。その際、意識してほしいのは「右も左も同じスイングをすること」だという。右だからこう打つ、左だからこう打つ、と最初から左右で決めてしまうのは良くないという考えだ。
「小さくまとまったスイッチヒッターにはなってほしくない。足が速いから左打席ではコツンと当てて出塁するというスイッチではなく、右も左もしっかり振って、しっかり打てるスケールの大きなスイッチヒッターが育ってくれたらうれしいですね」
打つポイントは打席に立った自分の体の前の数十センチ。ティー打撃では体が前に突っ込まないように、どちらの打席でも捕手側の肩を開かずに後ろに残すイメージで体を回転させることを、分かりやすくかみ砕いて説明を続けた。
応援リポーターとして参加していた元日本ハムのスイッチヒッター、杉谷拳士氏が「稼頭央さん、僕が一番教わりたかったです。10年早く、教えてほしかったです」と叫んで場内が沸く一幕も。参加者からは「スイッチってどうやるの?」「投手によって打席を変えるの? 無理無理!」といった声や「今からスイッチ目指そうかな」という前向きな意見もあった。
現在は希少な存在となったスイッチヒッター。その言葉すら知らない人も増えてきた中、レジェンドの指導が少女たちの好奇心をくすぐった一日となった。
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