本塁打を打てる選手を育てるには…オリ杉本を導いた師が提案する“体重別チーム”

公開日:2022.09.12

更新日:2025.02.18

文:間淳 / Jun Aida

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日米でプレーした根鈴雄次氏、野球塾で小学生からプロまで指導

 本塁打を打つ楽しさを知ることが将来、本塁打打者になる可能性を広げる。日米でプレーし、現役引退後は“ラオウ”の愛称で知られるオリックスの杉本裕太郎外野手を覚醒させるなど、子どもからプロまで幅広く指導している根鈴雄次さんは、少年野球の子どもに特別な技術指導は必要ないと強調する。大切なのは本塁打の喜びを味わうこと。そのために、子どもたちにはバットの特徴を知り、体を大きく使ってスイングするよう伝える。また、体重別に分けたチーム編成や大会開催の必要性も訴えている。

 元マリナーズのイチロー氏が海を渡る前に、野手としてエクスポズ傘下の3Aでプレーしていた根鈴さんは帰国後、BCリーグや四国アイランドリーグなどで2014年まで現役を続けた。引退後は横浜市で野球塾を開き、少年野球からプロまで多くの選手が指導を求めて訪れている。杉本が2018年オフから「根鈴道場」に通い、昨シーズン本塁打王のタイトルを獲得したことから、その名が一気に広がった。

 根鈴さんの打撃理論は、ヘッドの重さを利用してバットを落として下向きにし、縦向きで面として打球を捉える。「上から叩きつける」「脇を締める」「ヘッドを返す」といった打ち方が浸透している日本の打撃指導とは対極に見えるが、米国をはじめとする他国では一般的だという。

少年野球の主役は子ども、本塁打の楽しみを感じさせる指導

 打撃理論が注目されている根鈴さんのもとには、少年野球の子どもたちも訪れる。ただ、小学生にはほとんど技術指導をしない。伝えているのは、ボールを遠くに飛ばす楽しさ、本塁打の喜びだ。

「正面からトスを上げて、本塁打を打つ楽しみを感じてもらっています。技術を学ぶのは中学生以降で十分です。気持ち良く打ってほしいだけです」

 少年野球チームの中には、ゴロを打つ打撃に指導の重点を置く監督やコーチもいる。しかし、根鈴さんは「野球を楽しいと感じなければ将来的に技術は伸びませんし、野球を続けようと思わなくなります。指導者の思い通りに子どもを動かすのではなく、主役は子どもたちです」と力を込める。「根鈴塾」では打撃練習で本塁打のラインを決めて、打球を遠くに飛ばす楽しさを伝えている。

 根鈴さんは少年野球の子どもたちに打撃フォームについて教えることはないが、必ず「バットの特徴」を伝えている。「バットには軸があります。きっかけとなる動きを加えれば、バットは自然と回ります。いかに重力に逆らわずに道具を使うかが重要です」。腕の力だけでバットを振っても飛距離を出すには限界があり、投球の見極めも悪くなるという。

「中学や高校で生きる」遊び感覚でバットの特徴を伝える

 バットの軸やヘッドの重さを伝えるために、根鈴さんは指先にバットを乗せてバランスを取る遊びを取り入れている。バットの特徴や感覚がつかめたら、バットを指先で回す。腕の力を使わなくても、ヘッドの重さを利用すればバットが回ると理解できる。最後に左打者なら右手でバットを握って、バットと腕が一直線になるように大きく回す。バットの特徴を生かしてスイングする必要性を小学生のうちに知っておくと、中学や高校で生きてくると説く。

 根鈴さんは子どもたちが本塁打の喜びを味わうためには、今の少年野球の仕組みを変える必要性も訴えている。特に小学生は体の成長に差があるためだ。学年で分ける現在のチーム編成だと、早熟な選手は出場機会が多く、打球を遠くに飛ばせる傾向がある。

 根鈴さんが提案するのは、体重別のチーム編成。学年に関係なく、同じくらいの体重の選手を集めてチームをつくり、対戦させる。カラーコーンなどで目印をつくり、体重と同じだけの距離を飛ばしたら本塁打とする。例えば、体重30キロの選手は30メートル飛ばしたら柵越えになる。根鈴さんは狙いを説明する。

「打球の飛距離は体重が大きく関係します。体格に合わせたルールの方が子どもたちは楽しめます。また、成長が早くて同世代で目立つ選手も、上の学年で同じ体重の選手とプレーすれば天狗にならず、謙虚に野球と向き合えると思います」

 根鈴さんは子どもたちに「アラボーイ」と声をかける。「いいね」「その調子」を意味する砕けた英語だ。小学生世代は野球を楽しむのが大前提。本塁打の喜びを知り、バットの特徴や打球を遠くに飛ばす方法に興味を抱けば、自ら練習して自然に上達すると考えている。

【動画】打撃のスタートはバットの特徴を知ることから 根鈴雄次氏が小学生に勧める“遊び”

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