保護者の過度な期待は「一番やっかい」 中日右腕の父が実践した“心育てる指導”
中日右腕・山本拓実の父・勝三氏が指導者時代に培った経験
中日・山本拓実投手の父・勝三氏は、かつて軟式少年野球チーム・仁川ユニオンズの監督を務め、兵庫県大会優勝に導いた。高校、大学時代に硬式野球部に在籍し、息子のユニオンズ入りをきっかけに指導方法を研究。「野球が好きになって、やりたいと思える心を育てる」を念頭に置いたという。その練習スタイルとはいかに……。さらには逆に野球人口減少につながりかねない「一番やっかいなケース」も指摘した。
勝三氏の指導方法には段階がある。「幼少期と小学校低学年というのは、野球が面白い、野球が楽しい、体を動かしたい、もっと野球をやりたいと思ってもらうように接していました」。そして、小学校中学年、高学年になるに従って「もっと野球を上手くなりたいというような心を育てる指導方法にちょっとずつ、シフトしていきました。野球が楽しくてもっと極めたいってそういうふうに思わせるように」と話す。
練習例として挙げたのが「野球じゃなくて置きティーにして、守備範囲を90度とかにして、守る側は2人とかを10メートル先において、そこを強い打球で、1人10本打って何球抜けたかを競わせるゲーム」だ。決まりはひとつ。「手を伸ばして背の高さ以下の打球で抜いていったら1点、上だったら抜けていきますので無得点」。すると、打つ子たちは強い打球を打つにはどうすればいいか、強く振るにはどうすればいいか、守る子たちは、どうやったら抜かれないかを考えるようになるという。
「上を越えるのはボールの下を叩くから、一番いいのはボールの真ん中を強くバンと叩けば抜けていく、そのためにはってね」。勝三氏が正しい打ち方を簡単に示すと、子どもたちはさらに考える。「いくら強く振ってもボールにきれいに当たらなかったらボテボテボテとなったり、上がったりするから、ボールをよく見て打とうとかね……」。質問も増えるが、ゲーム形式だからみんな楽しそうにやっていたそうだ。
「野球を初めてする子も置きティーからやれば入りやすい。それでもボールと関係のないところを叩く子もいるけど、バットの振り方から教えてあげて、守備の子たちを前のほうにすれば抜けやすくもやる。抜けたら、やったぁってね」。そういうちょっとした工夫で変わる。まず野球は面白いということをわかってもらうやり方。最初は止まったボールだが、次はトスしたボールに、というようにステップアップしていったという。