医学生右腕が受け止めた“不満と涙”「ズンときた」 甲子園目標から一変も…準硬式で得た財産

更新日:2025.11.26

文:喜岡桜 / Sakura Kioka

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準硬式東西対抗戦で初の甲子園マウンド…防衛医科大学校の医学生投手

 多様な選手が集まる野球チームだからこそ、人間的に成長できることがある。阪神甲子園球場で21日、「第4回全日本大学準硬式野球 東西対抗日本一決定戦甲子園大会」が開催され、西日本選抜が東日本選抜に9-5で勝利した。敗れた東日本選抜の一員として試合中盤でリリーフした奥山虎太郎投手(防衛医科大学校4年)は「すごく良いマウンドでのみ込まれてしまいました」と、初めて立てた夢舞台を振り返った。悔しさよりも感動の方が大きかった。

 同大会は、準硬式野球の認知度向上や部員同士の交流を図ることなどを目的に、全日本大学準硬式野球連盟の主催で2022年から甲子園で開催されている(第1回は雨天中止)。同連盟の理念である「学業とスポーツの両立」を体現し、選考基準を満たした代表にふさわしい選手が東日本、西日本からそれぞれ25人ずつ選抜され、聖地を舞台に対戦する。

 その1人の奥山投手は、夢を叶えられなかった高校時代に想いを馳せる。コロナ禍に見舞われた高校3年時の2020年、宮城・仙台第一のエースとして独自大会で56年ぶりの決勝進出をかけて仙台育英と対戦。途中から救援するも1-7で敗れ、悔いが残った。医師を目指して埼玉の防衛医科大学校へ進学すると、準硬式野球にも甲子園に立てるチャンスがあることを知り、同大学校の学友会活動(部活動)で野球を続けることにしたという。

 だが、環境は大きく変わった。「プレーヤー30人のうち10人は女子。初心者で入ってくる子もいて、高校野球をしていた選手は5人くらいしかいないんですよ」。さらに、卒業まで6年間あるため、4年制大学よりチームメートの年齢幅が大きい。中間にあたる3年生1人が監督を1年間兼任するのがルールで、奥山投手はその大役を今年8月まで担っていた。

多種多様な人がいると難しい“ワンチーム”も…磨かれた統率力

大会には「学業とスポーツの両立」する準硬式の選手たちが集まった【写真:喜岡桜】

「レベルの差がありながらも、野球をやりたいという気持ちはみんな一緒なんですよね。その欲求を叶えていくのが本当に難しくて。試合に出られなくて泣いちゃう子もいました。監督として申し訳ないなって思ってはいましたが、僕も試合に出なきゃいけないので(気を配りきれなかった)。それでもチームを良くしようと思い、続けていました」

 兼任監督になったばかりの頃は、チームメートからの不満や涙に至らなさを感じ「(心が)ズンときていました」と胸に手を当てる。だが、さまざまな年齢や性別、経験値の選手で構成されたチームだからこそ磨かれたことがある。将来、他の医師や看護師と連携し治療に当たっていく、“ワンチーム”となって物事を成し遂げるための力だ。

「すごくその(連携の)練習になったような気がします。自衛隊の医者を目指す学校なので、チームで動くこととか統率が大事とよく言われているんです。医者にとってそれは必要ですし、今のチームで、本当に良い“練習”になったと思います」

 高校時代の悔いを晴らし、すっきりとした表情でそう話す奥山投手。準硬式野球を通して得た財産を強みに、これまで以上に医師への道を邁進する覚悟を甲子園で誓っていた。

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