“控え中学生”を「前向きな人間に」 4軍制でもチャンス均等…日本一チームの全肯定運営

公開日:2025.09.16

文:尾辻剛 / Go Otsuji

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全日本選手権を制覇…高崎中央ポニー・倉俣徹監督が説明する“4軍制”の意味

 出場機会などチャンスを平等に与えることは、少年野球の指導において重要なことだ。今年7月に行われた中学硬式野球ポニーリーグの全日本選手権を制した「高崎中央ポニー」(群馬)の倉俣徹監督は、「試合ではみんなに同じ打席、同じ守備機会を与えたい」と主張する。First-Pitchでは小学生・中学生世代で全国制覇を成し遂げた指導者を取材。昨年8月にボーイズリーグから、主要大会に複数チームがエントリーできるポニーリーグに移籍したが、選手の公式戦への出場機会が増えることでモチベーションが上がり、緊張感も高まるという。

 7回制で行われる中学硬式野球。「練習試合で3試合行う場合、1試合目は1軍のAチーム、2試合目は2軍のBチームの選手、そして3試合目は均等に出場機会を与えるため、3.5イニングずつ起用します」という。打撃の能力が高いAチームは安打が多い分、2打席以上回ってくる可能性が高い。一方、Bチームは1打席しか回ってこない選手が多くなる可能性が高い。「もしそうなっても、同じ機会を与えているんだから、そこで頑張ってアピールしなさいということです。ヒットが増えれば2回目の打席が回ってくる選手が増えますから。そこは競争です」。

 チームを1〜4軍の4つのチームに分けているが、「2軍」「3軍」といった呼び方はしない。倉俣監督は巨人でトレーニングコーチの経験があり、現在は巨人の野球振興部長を務めていることもあり、1軍は「ジャイアンツ」、2軍は次のジャイアンツ候補ということで「ネクスト」、3軍は将来性を考慮して「フューチャーズ」、中学に入学したばかりの1年生は「ジュニア」と呼ぶ。「1軍、2軍、3軍、4軍と呼ぶより、2軍より下のチームは肯定されている感じがすると思います」。

 さらに倉俣監督はポニーリーグの有効性も説く。「同じ大会に複数チームでエントリーできるし、メンバーも大会ごとに変更できます。すごく融通が利く。選手のモチベーションを保てるし、常に全員が試合に出られて補欠がいない状況を生み出せます。後は少しでも上のチームで自分が出るんだというこだわりを持ってくれればいい」。

 大会ごとにメンバー変更が可能なら、努力や成長次第で上のチームでプレーできる。そういった競争意識がチーム力を高める。実際に7月の全日本選手権ではトップチームの「ジャイアンツ」が優勝し、セカンドチームの「ネクスト」もベスト16入り。サードチームの「フューチャーズ」も出場し、1回戦で敗れたものの「全国大会に出て社会性とか経験値が上がりました」と監督は振り返る。

練習で心がけるのは選手を褒めること「前向きな人間になりやすい」

選手とミーティングする倉俣徹監督(左)【写真:尾辻剛】

 成長期の中学生は、どうしても成長度合いにも差が出てしまう。早く体が大きくなる子もいれば、なかなか大きくならない子もいる。「体が小さくて試合に出られない子には、諦めないように声かけしないといけない。逆に体力があって試合に出ていても、投げ方が悪いとか打ち方が悪い子には、『そこを直さないと追いつかれちゃうよ』とアドバイスしないといけないですね」。

 心がけるのは選手のプロセスを褒めること。「できなかったことができる様になった瞬間に『すごいな』と褒めて、承認欲求を満たします。『ダメだダメだ』と言われるより、前向きな人間になりやすい」。倉俣監督が気にするのは選手だけではない。無意識にコーチ陣にも配慮。練習内容も細かく指示し、「お願いします」「そうやって進めてくれると助かります」といった丁寧な言葉で対応する。

 指示の内容も具体的だ。理由は巨人の野球振興部長として子どもたちを指導していることに起因する。「幼稚園児や小学生に教えていると、上から目線は通用しません。相手が理解できる言葉で伝えないとダメなんです」。小さい子でも理解できるくらい、より分かりやすく。「それが中学生を教えるにあたって必要です。まあ、中学生は考える力があるし自分で動けるし、幼稚園児に比べればはるかに楽です」と笑みを浮かべる。

 チーム運営にあたって、もう1つ大事なのが保護者。各学年で、コーチを務めている保護者も多い。「保護者コーチがいないとチーム運営が成り立たなくなる。保護者コーチをグラウンドに入れないチームは結構ありますが、うちはマニュアルを作って指導方針をしっかり決めています」。体力を鍛える、技術を鍛える、実戦能力を鍛える——この指導方針3本柱を徹底するには、コーチは多いほうが良い。

 倉俣監督は、自らが前面に立ちすぎないことも大切にしている。チームの部員は最後の大会を終えた3年生を含めて72人。「自分1人ではコントロールできないですから。できるだけ、こちらが思っていることをコーチに理解してもらって、子どもに落とし込む。その方が効率がいいんです」。倉俣監督は10月末開催の「日本一の指導者サミット」に出演予定。コーチの意見も柔軟に取り入れ、ワンマンチームにならないことも、チーム運営を円滑に進める1つの手段なのである。

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