
高崎中央ポニー・倉俣徹監督が解説する実戦形式練習の意義
中学生を「飽きさせない指導」が重要だ。今年7月の中学硬式野球ポニーリーグ全日本選手権を制した「高崎中央ポニー」(群馬)の倉俣徹監督は、分刻みの練習メニューを作成。全体練習では実戦形式の練習を多数組み込み、試合を想定した場面を「各3分」などと区切ってさまざまなパターンを実践する。First-Pitchでは小学生・中学生世代で全国制覇を成し遂げた指導者を取材。トータルでは長時間となる練習も、メリハリをつけて選手の集中力を切らさない工夫をしている。
「中学生は飽きると集中力が切れるんですよ。できるだけ選手たちが主体になるように、飽きないように意識しています」。午前7時に集合して始まった取材日の練習は、午前はウオーミングアップ、キャッチボール、シートノック、そして実際に走者を置いての実戦形式のノックと濃厚な内容。「試合を想定して、練習のための練習にならないように注意しています」と力を込める。
シートノックは無死一、二塁や1死一塁など複数パターンを想定して行う。「練習試合や公式戦を通じて、できたプレーとできなかったプレーがある。エラーしたり、ライナーで飛び出してゲッツーを食らったり、いろんな課題が出る。それを実戦形式の練習で克服するよう意識してくれれば内容が濃い練習になります」。反省を踏まえた取り組みに加え、選手に刺激を与えることも忘れない。
さまざまなパターンでシートノックを行った後の、走者を置いてのノックは、「どこに打球が飛ぶか、何が起こるか分からない状況」の応用練習の位置づけだという。「その中でパターン練習と同じように表現できるか、それともミスしちゃうのか、そういうのもチェックします」。走者なしのノックと走者付きのノックでは当然、難易度が変わる。
「学校の勉強と同じです。足し算だけや引き算だけのドリルをやる。そこに掛け算や割り算の応用が入ってくるとケアレスミスが起きます」。実戦で犯したミスは、次の実戦で同じことが起きた時に取り返せる。ミスが起きたことで選手に考えさせ、成長を促す。さらには実戦でしか養えない“第六感”にも言及。「非認知能力というか、見えない中で感じる力というのはすごく大事なんです」という。
「相手の雰囲気を感じて、投手なら『ここに投げれば大丈夫』だとか、野手だと『ここに投げれば相手はここに打ってきそうだから三遊間を絞る』『センターラインを絞る』『後ろに深く』『浅く守る』とか、五感を超えて第六感が働く選手はセンスがある。それは教えてできることではない。実戦練習を重ねて、身につけるものです」
基本の次は連係プレー…ポイントは声かけ&ジェスチャーによる意思疎通

ミスは成長のために必要なことでもある。「実戦練習でケアレスミスが起きた時にはすぐに振り返って、『もっと声を出さなきゃダメだ』『チャージしなきゃダメだ』『的を作る時にお互いの会話がないとダメだ』とか、課題が出てきます。それを解消する。そこは大事ですが、それだけだと中学生は飽きる。そこで飽きさせないようにチェックポイントを少なく絞って練習します。連係プレーの難しさも出てきます」。
連係プレーで大きなポイントとなるのが声かけだ。「捕る、打つ、投げるといった基本ができていると、次にやるのは仲間との連係になる。声が出ない選手は連係プレーでは後手後手に回ってしまう。無言で見つめ合っても相手の気持ちは分からない」。だから声を出すことが大事なのだ。
それでもスタンドからの声援などで、声が届かないケースも起こりえる。その時はジェスチャーで対応する。「消防士だって車掌さんだって、工事現場のヘルメットをかぶって作業している人も、みんな指さし確認している。声とジェスチャーを組み合わせることはすごく大事です」。練習では選手同士で声をかけ合い、時にはジェスチャーを交えて連係する場面が見られた。
「技術練習の基本は、できるだけボールタッチを増やすこと。その後は連係プレーだから、協力し合ってする練習です。意思疎通をしっかりさせる。それがメインになってきます」。それがチームとして共有している認識だ。倉俣監督は10月末開催の「日本一の指導者サミット」に出演予定。細かいメソッドが確立されているから、練習に飽きがこない。見ている人間も飽きない、楽しめる練習内容の一端を披露する。
中学硬式ポニーリーグで全国制覇…高崎中央ポニーの指導・練習法を紹介!
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