「チームはスターを育てる場ではない」 競争意識を促して頂点に立った少年野球チーム

公開日:2022.09.07

更新日:2023.12.26

文:間淳 / Jun Aida

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「中条ブルーインパルス」の尾崎代表「子どもは思った以上に敏感」

 石川県の少年野球チーム「中条ブルーインパルス」は8月、“小学生の甲子園”と呼ばれる高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会「マクドナルド・トーナメント」で初めて頂点に立った。能力が突出した選手を集めるわけでもなく、練習時間が長いわけでもない環境で日本一を果たした理由は、競争意識と状況判断にある。レギュラーを特別扱いしない指導方針で、チーム力を高めている。

 中条ブルーインパルスは今夏、少年野球チームの日本一に輝いた。平日の練習は週3回で、毎回1時間ほど。普段の練習メニューは柔軟体操から始まり、ランニング、キャッチボール、ノック、打撃練習と特別な内容はない。チームを運営する尾崎弘由代表が強さの理由に挙げるのは「競争意識」。大会直前を除いて全ての選手が同じメニューをこなす。

「レギュラー中心の練習はしていません。昔は選手をランク付けして特定のメンバーを固定した時期がありましたが、今は必ず競争させます。レギュラーになるには結果が求められますが、失敗したからといって注意することはありません。子どもは大人が思っている以上に敏感です。競わせる環境があれば自分より上手い選手と比べて何が足りないのか考えます」

 練習では怪我の予防に細心の注意を払う。無理な遠投や投げ込みは避け、肘や肩に負担がかからない投げ方を指導する。ただ、それ以外は選手の好きな投げ方や打ち方に任せている。大切なのは、選手に競争意識や自主性を芽生えさせること。尾崎代表は「指導者が個々に応じた指導、声かけをするようにしています」と話す。

「同じ打撃練習でも、子どもによって描いている打球のイメージは違います。2人の右打者が同じようなセカンドゴロを打ったとしても、言葉のかけ方は変わります。レフトへ大きな飛球を打つ能力がある選手であれば、理想の打球に近づけるための修正ポイントをアドバイスします。一方で、普段は外角の球にバットが当たらない選手に対しては、『いい打球が飛んだね』と声をかけます。同じような体つきの選手で打力に差がある時に『体の大きさは同じなのに、何でお前は打てないんだ』というような発言は絶対に禁句です」

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