“肩慣らし廃止”で「適当な球が減った」 種類は100超…全国16強の実戦的キャッチボール

全日本学童で日本一も経験…北海道・東16丁目フリッパーズの独自メニュー
北海道・札幌市東区の少年野球チーム「東16丁目フリッパーズ」は、2017年に“小学生の甲子園”「高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」を制した実績を持ち、今夏の同大会でもベスト16に入るなど全国的に名を知られる存在だ。その力を支えているのが、独自に組み立てられた練習メニューである。今春から従来の“肩慣らし程度”のキャッチボールを廃止し、さまざまな動きを組み込んだ100種類以上のキャッチボールメニューを導入した。笹谷武志監督に、その効果を語ってもらった。【記事下の動画を参照】
うつ伏せから立ち上がっての送球、素手で拾ってからの送球など、東16丁目フリッパーズが実践するキャッチボールの動きは実戦を想定したものばかり。捕球側も中継プレーやタッチプレーの動作を加え、ただ投げ合うだけで終わらせない。100種類超からセレクトした30種類ほどを毎日短時間でこなすことで、緊張感が生まれ、従来のキャッチボールが一変したという。「ただの肩慣らしじゃないから真剣なのでしょうね。暴投とか適当なボールがなくなりました」と笹谷監督は目を細める。
全員が笛の合図で同時に投げるため、指導もしやすい。「最初はバラバラでしたが、今ではグラブにボールが収まる音が同時に響きます。全員がミスなくピタッとそろうのが理想です」。2人のコーチが不在のことが多い平日でも1人で全員を指導できるのは、このキャッチボールが“同じ意識を共有できる場”になっているからだ。
意識づけはそれぞれのメニューに組み込まれている。例えば「しゃがみ軸作り」は、しゃがんだ姿勢から立ち上がり、軸足の股関節に頭の重みを乗せるイメージをしてから投げる。崩れた体勢のまま投げ急ぐとエラーにつながるため、監督は「軸をつくれ」と繰り返し伝える。短い言葉で指示し、同じ動作を反復させることで「軸」という感覚が子どもたちの体と頭に自然と刷り込まれていく。
その積み重ねは実戦で生きる。送球ミスが出た時に「軸ができていないぞ」と声をかけると、選手たちはすぐに練習で得た成功体験を思い出し、自分の動きを修正する。「子どもたちには専門的な言葉ではなく、一言で十分なんです」と笹谷監督は語る。
打撃練習も独特…重いバットと細長いバットを使用

キャッチボールは同じ動作を繰り返すため、誰もが「できた」という感覚を得やすい。指導者は「今の(感覚)だよ」「今のはダメ」とその場で端的に示し、その一言で子どもたちは正しい感覚をつかんでいく。試合で失敗してもすぐに立ち直ることができるのは、キャッチボールでの成功体験に加え、練習と実戦をつなぐ言葉と感覚の連動があるからだ。
キャッチボールに限らず、メニューには工夫が詰まっている。中には、お蔵入りになったものもあれば、形を変えて復活したものもある。逆シングルでショートバウンドを捕る練習は、難しい動きを成功体験に変えるためのもの。子どもたちが「自分はうまくなっている」と感じられるメニューが多い。「科学的な根拠はわかりません。こういう動きをさせたら、うまくなるだろうなというものばかり」と25年間の指導歴で培った笹谷監督の経験則に基づいている。
打撃練習も独特だ。普段使うバットではなく、重い練習用バットと細長いノックバットを使用する。重さでパワーを、細さでミート力を磨き、扱いにくい道具で振り込むことで「試合用の自分のバットが一番扱いやすい」と実感させる。打撃はマシン2か所と手投げ2か所の計4か所で行う。手投げでは緩急をつけてタイミングを養わせ、マシンでは立ち位置を変えて内角と外角の両方を打たせる。
若い頃は「数をこなせば上達する」と信じていた笹谷監督も、今では感覚を重視し、練習方法を工夫する。今年のマクドナルド・トーナメントで8度目の優勝を遂げた大阪の強豪・長曽根ストロングスの練習見学に行き、インターネットから得た情報も積極的に取り入れてきた。「25年前よりも情報量は格段に多くなりました。いろいろな方との出会いもあり、刺激を受けながら、勝ちたいという思いで工夫してメニュー開発をしています」。進化を続けるフリッパーズの練習から、これからも新しい成功体験が生まれていく。
【実際の動画】メニューは100種類超 複数動作で生む緊張感…「東16丁目フリッパーズ」のキャッチボール
【動画】
— First-Pitch -野球育成悩み解決サイト-【by Full-Count】 (@FirstPitchC2) October 6, 2025
今夏の「マクドナルド・トーナメント」で全国16強
札幌「東16丁目フリッパーズ」のキャッチボールの様子⚾️
メニューの数は実に100種類超😳
笹谷武志監督は豊富なパターン導入で「暴投などのミスが減った」と語ります👍
「日本一の指導者サミット2025」詳細は👇https://t.co/DLPaBl6Uld pic.twitter.com/fjbLbn3GI4
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