熱中症対策で冷やすべき“体の部位” 首や脇ではない…指導者が失敗しない「最新知識」

更新日:2026.02.06

文:高橋幸司 / Koji Takahashi

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全日本野球協会主催「野球指導者講習会」で披露された熱中症対策の最新知識

 子どもの命にも関わる暑熱対策には、最新知識へのアップデートが欠かせない。全日本野球協会が主催する「野球指導者講習会」(Baseball Coaching Clinic)が1月24日、25日に東京都内で行われ、座学を中心とした初日には、猛暑の時代の大きな課題である「暑熱対策」に関するパネルディスカッションを開催した。専門家や現場指導者が登壇し、選手の熱中症を防ぐために冷やすべき“部位”と、現場での実用例について意見が交わされた。

「野球指導者講習会」は全国の指導者や、指導に興味を持つ人を対象に毎年開催されており、初日は専門家を招いての座学、2日目は元プロ選手らによる実技講習を実施した。パネルディスカッションには、日本スポーツ協会(JSPO)スポーツ科学研究室の青野博室長、国際武道大学体育学部の笠原政志教授、そして今春の選抜高校野球大会に出場する埼玉・花咲徳栄高の岩井隆監督がパネリストとして登壇し、160人の参加者が熱心に耳を傾けた。

 熱中症対策には、何より体を冷やして深部体温を下げることが肝要だが、そのために多くの人がイメージするのは、アイスパック(氷のう)などを大動脈が流れる首や脇の下、鼠径部に当てる方法だろう。血液を冷やして体内に循環させることが目的だが、実は、より効率的に冷やせる部位があるという。それが「手のひら」(手掌冷却)だ。

「手のひらと前腕部には、動脈と静脈とを結ぶバイパスのような特殊な血管(AVA血管)があり、そこで血液を冷やし全身に流すことで、効果的に冷却しやすくなります」と青野室長は説明する。具体的には、練習の合間や試合のイニング間を利用し、バケツなどに入れた15〜20度程度の水に15分程度、両手を浸ける。氷を大量に入れる必要はなく、サウナの水風呂程度の水温にするのが目安だという。

 逆に首や脇の下などは、実はそれほど効率的ではない。笠原教授は「そもそも大動脈は血管の壁が厚い上に、血流のスピードが速い。手のひらは血管が網目状になっているので、血液が流れる時間も長く、壁も薄いので冷やしやすいのです」と解説した。

事前に試して、選手に合う対策を見つけておくことが大事

野球指導者講習会のパネルディスカッションの様子【写真:高橋幸司】

 とはいえ、実際に手掌冷却を野球の現場に落とし込むとなると難しさもある。岩井監督は「ウチではうまくいかなかった」と語り、理由をこう続けた。

「特に投手は指先がすごく繊細。練習試合で試した時に、ある投手は手を濡らした影響で、逆に乾燥しているように感じたらしく、ロジンを頻繁に使っていました。別の投手はそれが理由かわかりませんが、マメが潰れたりもしました。投手は体を冷やすよりも『いい球を投げたい』という気持ちの方が強くなるかもしれません」

 選手によって手指の感覚が狂うことに抵抗があるケースもあるし、学童野球の指導もしている笠原教授は、「小さい子はバシャバシャと水遊びを始めてしまうことがある」とも。大切なのは、手掌冷却のほかにもアイススラリーの摂取など、体の内から外から、深部体温を下げる方法を知っておくこと。「試合(公式戦)でいきなり試して失敗するのが一番いけません。事前にいろいろ試して選手に合うものを見つけておく。あえてやらないのと、知らないのとでは大きな違いです」と青野室長は力説した。

 ちなみに、選手が熱中症にかかって倒れてしまった場合は、何より救急車を呼ぶと同時に、早急に全身を氷水で冷やすことが大切だ。「急激に冷やすと心臓発作を起こすのでは、と言う方もいますが、その心配はありません。クールファーストが世界のスタンダードです」と青野室長。こうした情報はJSPOのホームページや冊子などでも紹介されている。まだ寒い季節だが、早い段階で準備をしておくことに越したことはない。

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