やらせる練習は「結果が出ない」 元甲子園球児の疑問…創部4年で全国常連になれたワケ

更新日:2026.01.29

文:尾辻剛 / Go Otsuji

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2022年設立で全国大会4度…「長崎ポニーベースボールクラブ」を率いる松尾大吾監督

 野球人口の減少に危機感を抱き、地方から野球界を盛り上げようと奮闘している。中学硬式野球の「長崎ポニーベースボールクラブ」は、長崎県出身の松尾大吾監督が2022年4月にチームを創設。間もなく、活動5年目に突入する。過去4年間で全国大会に4度出場し、最高成績は3位。一気にチームを強化した指揮官が、長崎ポニーを立ち上げた経緯を振り返った。

「野球人口が減っている中で、一番の取っかかりとなる部分である小学生の指導に疑問を持ったんです。やっぱり、小学生や中学生は野球を楽しむことが大事。練習を強制して『ああしろこうしろ』とやっていると、野球が嫌いになっていくケースがある。それで野球をやめたり、中学では別の部活に行ったりしている子どもを見て、何とかしたいと思ったのがきっかけでした」

 長崎市の琴海地区出身である松尾監督は、福岡の柳川高に進学。2年生で「3番・三塁」だった2000年に春夏連続で甲子園ベスト8に進出し、高校日本代表にも選出された。九産大4年時には明治神宮大会でチーム初の日本一に貢献。卒業後は地元に戻り、三菱重工長崎でプレーを続けた。

 30歳を前に現役を引退。現在はサラリーマンとして生活を送る中、長男がソフトボールを始めたことで、所属チームの指導に携わるようになったという。他チームとの交流も増える中で感じたのが「やらされている練習」。子どもたちが楽しくなさそうに見えたことがしばしばあった。

 指導への意欲が高まると同時に、社会人野球まで経験しただけに「小学生よりもう少し上のカテゴリーで本格的な指導をしたい」と考えるようになった。自身は中学時代、現在は消滅してしまった琴海地区のボーイズに所属。当時の知り合いに相談するうちに、ポニーリーグの魅力に強く惹かれていった。

「まずは子どもファーストの方針があります。球数制限や1年生は変化球禁止など怪我に細心の注意を払います。その中で公式戦の数が多く、選手は実戦経験が積めます。全国大会は開会式をみんなで迎えて、敗退しても交流戦があったり、最後まで残ります。決勝戦まで見て、閉会式まで参加する。宿泊費用はかさみますけど、得られるものが多いんです」

 春と秋のリーグ戦に加え、並行して毎月のように公式戦の大会が開催される。シーズン中は毎週、公式戦が行われるような感覚である。松尾監督は日本ポニーベースボール協会に「チームを作りたいんですけど」と電話で相談。「その場で『いいですよ』ってなったんです。『えっ、いいんですか?』って本当に言ってしまったぐらいです」と当時を回顧した。

避ける強制的な練習…スローガンは「楽しみながら勝つ」

長崎ポニーベースボールクラブの松尾大吾監督【写真:尾辻剛】

 ソフトボールを指導していた時期に、合同チームで県大会や九州大会に出場。その時の教え子たちが松尾監督を慕って15人集まり、長崎ポニーが始動した。

「コーチという立場では指導に限界があります。それなら監督をした方がいいと考えました。でも、立ち上げた当初はコーチもいないし、グラウンドの予約から何から全部1人でやっていたので、かなり大変でした」

 そんな状況で出場した創設1年目の1年生全国大会で、いきなりの快進撃。あれよあれよとベスト4に進出した。評判は口コミでも広がり、2023年も15人が入部。やっかみもあり「あることないこと噂する人もいて苦労した時期もあります」と2024年は入部者が激減したものの、2025年は再び持ち直して3学年合わせて35選手が所属している。現在の小学6年生も、多くの入部希望者が集まっている。

 チームのスローガンは「打ち勝つ」「楽しみながら勝つ」。これまで疑問に感じていた指導者による強制的な練習は避け、選手が楽しむことを意識する。「自分も現役の時に感じていたけど、やらされる練習はやっぱりきつい。結果も出ません。子どもも同じで、自発的に主体性を持ってやらないと上手にならない。そこは重要視しています」。自分からすぐに答えを伝えず、まず選手に考えさせることも多い。

 ハードな練習は当然あるが、きついだけで終わらないように心がける。厳しいダッシュはチーム戦で競争。連続20球のトス打撃も全員で速さを競い、上位の選手にはドリンクやお饅頭などの“ご褒美”を用意して「楽しさ」を演出している。

「やっぱり『野球が楽しい』って思わないと、成長しないかなって思っています。個人的には30歳まで長崎で野球をやらせてもらった恩返しをしたい。野球の魅力を少しでも長崎の子に伝えたい。あわよくば大学、社会人、プロと上のレベルでやってほしい思いがありますね」

 まずは心から楽しんでプレーすること。高校、大学、社会人と厳しい環境で野球を続けてきたからこそ、強く伝えていきたい思いがある。

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