軽い気持ちで入れたチームが「全国強豪」 定位置はボールボーイ…両親が抱いた“後悔”

文:石井愛子 / Aiko Ishii

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2年半の控え生活→強豪学童の主将、ヤクルトJr.主将に成長遂げた神林駿采

 長年の“ボールボーイ役”から、全国屈指の精鋭の一員に上り詰めた。昨年末に開催された「NPBジュニアトーナメント KONAMI CUP 2025」で、東京ヤクルトスワローズジュニアのキャプテンを務めた神林駿采選手(6年)は、所属する千葉・豊上ジュニアーズでも主将としてチームを牽引してきた。豊上といえば、“小学生の甲子園”と呼ばれる「全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」に昨夏を含めて6度出場している、全国トップクラスの強豪。有名チームからジュニア選出という一見、華やかな“球歴”にも思えるが、その道のりは決して平坦なものではなかった。

 神林くんが豊上に入団したのは小学2年生の6月。姉の同級生が在籍していたこともあり、「近所の強いチーム」という認識はあったものの、そこが全国区の強豪チームと知ったのはしばらく経ってからだった。入団した時点で同学年にはすでに13人が在籍していたが、「強い豊上で野球がやりたい」という意志をもった選手ばかりで、父母ともにその意識の高さに驚いたという。

 父・直樹さんは、小学生の頃に学童チームに所属するなど野球経験はあったものの、知識はほとんど“素人同然”。直樹さんは「こんなにレベルの高い場所に、参加して申し訳ないと感じるほどでした」と振り返る。

 近所のチームということ以外、特にこだわりもなく入団させたことを、その後両親は後悔することになる。

「入団した2年生から4年生の秋まで、試合に出場する機会はほとんどありませんでした。息子の定位置は、いつもボールボーイ。親としては正直かなりつらかったです」と母・久美子さん。厳しい現実の中で、このまま強豪チームで野球を続けさせるべきか悩んだと話す。

 父母ともに共通していたのは、全国を目指すよりも、ただ純粋に「野球を楽しんでほしい」という思い。試合に出られない日々が続く中で、「他のチームでやったらどう?」と、何度も息子に移籍を提案したという。しかし、そのたびに返ってくるのは「豊上で野球がやりたい」という言葉。2年近く何度も問い続けたが、「たとえ試合に出られなくても、このメンバーで野球がやりたい」という仲間との絆を一番に優先する息子の意志は、決して揺らぐことはなかった。

「4年生の秋に上の学年の帯同で呼ばれるようになりましたが、あ〜、またボールボーイ要員だろうな、と。でも、代表(トップ)チームの高野(範哉)監督が『今は全く野球を知らないけれど、上の学年でやらせたい』と言ってくださって、そこから野球人生が変わったというか、5年生から徐々に試合に出させてもらうようになりました」(久美子さん)

「かわいそう」と決めつけていたことが間違っていた

実力をメキメキと伸ばしヤクルトジュニアで躍動した【写真:加治屋友輝】

“豊上で野球を頑張りたい”という強い意志と、愚直に練習をする姿が高野監督の目にとまり、その指導の下で神林くんはメキメキと才能を開花させていった。捕手と外野手を兼任する強肩・強打の選手として、5年時、6年時と2年連続でマクドナルド・トーナメント8強入りに貢献。“プロの登竜門”NPBジュニアのセレクションも通過し、大会本番でもヤクルトジュニア4強入りの原動力になった。

 入団から2年半もの間、本当にこの環境が最善なのか……と悩み続けた両親。一方で息子は、厳しい中でも“仲間たちと強くなる”道を貫き通した。そして、中学からは硬式野球の世界に挑む。

「心の支えとなったのは、息子がずっと『このチームで野球を続けたい』と言い続けていたことでした。試合に出られない日々の中で、親自身が納得できる理由を探していたのだと思います」

 久美子さんは当時をそのように振り返り、親としてどう向き合うべきだったのか、改めて思うことがあるという。

「親が勝手に、試合に出られないから『かわいそう』『きっと楽しくないはず』と決めつけてしまっていたことが間違っていました。続けたいという息子の気持ちに寄り添い、その気持ちを大切にしてあげるべきだったと今は思います」

 どんな状況にあっても、グラウンドに立ち、野球をするのは子ども自身だ。その主役が誰なのかを見失わないこと。それこそが、支える立場に求められる姿勢なのかもしれない。それでも、子どもの一番近くで見守る存在だからこそ、親は一緒に悩み、同じように悔しさを抱える。厳しい時期を耐えて、大舞台で花を咲かせた神林くん親子に拍手を送りたい。

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