
見えない会話を可視化…「愛知尾州ボーイズ」がAtletaで築く育成革新
コミュニケーションが選手を成長させる。中学硬式野球の強豪「愛知尾州ボーイズ」(以下、愛知尾州)は今春の「スターゼンカップ 第55回日本少年野球春季全国大会」を初制覇するなど、ボーイズリーグでの通算優勝回数は80回を超える。躍進の裏には、約70人の部員を支えるオンラインツールがあるという。First-Pitchでは小学生・中学生世代で全国制覇を成し遂げた指導者を取材。藤川正樹監督に、導入の意図と効果を聞いた。
愛知尾州では5年前から、オンラインのコンディション管理・コミュニケーションツール「Atleta」(アトレータ)を取り入れ、指導者と選手の関係性を深めている。選手はAtletaに体調、練習内容、身長・体重、疲労感、目標などを入力し、監督や指導者がフィードバックする仕組みをとっている。
藤川監督は、選手からの毎日の入力に価値を見出す。「今、一人ずつやっているんです。昨日何をやったよとか、いろいろ書いてくれる」。選手の記入にコメントで返したり、スタンプで反応したりもする。「良かったね」など、ちょっとした言葉でも選手たちは反応を受け取れる。その積み重ねが互いの信頼につながるという。
コメントの内容や文量は自由。たくさん書いてくる子もいれば、1行の子もいる。野球についてではなく「勉強しました」「家族と旅行に行って楽しかった」など、なんでもよし。こうした自由度が、選手を窮屈にさせず、継続できる要因になっている。「絶対に書かなければいけないとはしていません」と藤川監督。重要なのは「毎日入力しなければならない」と、選手に義務と感じさせないことだ。
だからこそ見えてくるものもある。毎日決まった時間に記入する選手もいれば、夜に一気に書く選手もいる。項目に分けてきっちり書く選手もいれば、自分が必要だと思うところだけ書く選手もいる。「色んなことが見えてくるんですよね」。保護者も自分の子どもの内容は閲覧可能で、安心感も生まれている。
体調の変化、悩みなども把握しやすく…指導者と選手を繋ぐツールとして活用

睡眠時間、疲労度など体調の変化も把握できる。藤川監督は「見た目では分からない精神的疲労とか、テスト勉強中で疲れているとか。体に気になる部分があればチェックできる。そういう選手がいれば『どうした? この病院に行ってみな』とすぐに話すことができます」と効果を語る。
「特に怪我は言いづらいですから。試合に使ってもらえなくなったらと悩むより、しっかり休みなさいと言ってあげた方が子どもたちにとっても楽なんです」。例えば、筋肉痛やちょっとした違和感を抱えていても言い出せない選手も多い。試合に起用されなくなることを懸念して口を閉ざすケースもある。しかし、Atleta経由なら異変が“見える化”され、指導者側が早めに声かけできるようになる。
こうした取り組みは、以前は野球ノートを通じて多くのチームで取り入れられてきた。ただ、毎日会うわけではない環境では難しく、毎日コミュニケーションを図ることは叶わない。デジタル化することで提出や管理の手間を軽減できる点も、Atleta導入の大きな理由だという。
愛知尾州の取り組みはITツールの導入にとどまらず、指導者と選手の関係を見える言葉でつなぐ仕組みを作るものだ。練習では見えない体調変化、心の揺らぎなどをキャッチして対応できるようになる。藤川監督は10月末開催の「日本一の指導者サミット」に出演予定。見えない声のやり取りが、選手育成の土台を築いている。
ボーイズリーグで全国制覇…愛知尾州ボーイズの指導・練習法を紹介!
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【日本一の指導者サミット2025・詳細】
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