球数の上限設定は故障予防の通過点 “肩・肘の権威”とポニーが目指すゴールとは

公開日:2022.05.23

更新日:2023.12.26

文:川村虎大 / Kodai Kawamura

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TJ手術の権威・古島医師「本当は制限したくありません」

 球数制限は、あくまで通過点と強調する。中学硬式野球「ポニーリーグ」は、育成世代の肩・肘の故障を予防する取り組みをいち早く取り入れてきた。「肩や肘は消耗する」という考え方が浸透し、一定の効果は感じているが球数制限はゴールではないという。

 投手の球数制限は近年、少年野球でも高校野球でもルール化された。プロ野球でも球数が先発投手の交代のメドとされ、ロッテ佐々木朗希投手は4月17日の日本ハム戦で、パーフェクト投球を続けていながら8回102球で降板した。

 中学硬式野球「ポニーリーグ」は野球少年少女の肩・肘の故障に危機感を強め、2020年に球数制限を設けた。中学1年は変化球を禁止し、1試合の上限は60球。2年は75球、3年は85球と定めている。投手と捕手の兼任や、ダブルヘッダーの連投も認めていない。リーグを運営する日本ポニーベースボール協会の理事で、肘内側側副靱帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)の権威としても知られている、慶友整形外科病院スポーツ医学センター長の古島弘三医師は球数制限は「あくまで啓蒙」と強調する。

「本当は制限したくありません。試合で制限しても、ブルペンや練習で投げ過ぎたら無意味ですから。今はルールを設けて、子どもを怪我から守ることが大事だと思っています」

 古島医師は、全ての指導者が選手の肩・肘の状態を把握して故障を予防できれば、球数制限は必要ないと考えている。だが、特定の投手に負担をかけている指導者らがいる以上、ルール化は避けられない。また、球数制限は指導者を守っている一面もあるという。

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