選手は花村博文監督を「花さん」と呼ぶ

花村監督が掲げる方針は「うまい選手を育てるよりも、野球好きを増やす指導」【写真:間淳】

 花村監督が掲げる方針は「うまい選手を育てるよりも、野球好きを増やす指導」だ。自身は静岡商硬式野球部でプレー。甲子園に何度も出場している名門校で、元巨人・新浦壽夫さんや元近鉄・大石大二郎さんら多数のプロ野球選手を輩出。最近では2020年ドラフト6位でDeNAに入団した高田琢登投手が卒業生だ。当時は全てを野球に捧げるような生活で厳しさは当たり前だった花村監督だが、「小中学生の女子には兄が野球をやっていて、野球に対して怖いイメージを持っている子もいます。指導者の罵声や保護者の当番制など野球のマイナスイメージを払拭したいんです。野球は本来、楽しいものですから」と語る。

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 野球に親しみや楽しみを持ってもらうために、選手には「監督」ではなく「花さん」と呼ばせている。ヒントにしたのは、サッカー女子日本代表の佐々木則夫元監督のチームづくり。選手たちから「則さん」と親しまれ、なでしこジャパンを2011年の女子ワールドカップで初優勝に導いた。花村監督は「引き締めるべきところは引き締めながら、選手との距離が近いなでしこジャパンは楽しそうな雰囲気でした」と参考にしている。

 指導者が選手を押さえつけないために、花村監督は「選手が嫌と言える環境づくり」を大切にしている。練習では「キャッチボールが終わったら、何人かのグループになって中継の練習」と指示を出すと、選手から「えー、やりたくない」と声が飛ぶこともある。そんな時、指揮官は「それなら、自分たちに足りない部分を考えて別の練習にしてもいい」と答える。

 選手たちはゴロを転がして捕球の練習をしたり、遠投をしたりする。ある程度の時間が経つと、自ら中継の練習をするグループも現れる。花村監督は和やかな楽しい雰囲気をつくるために音楽をかけて練習しているが、選手から「この曲は今の練習に合わない」と別の曲への変更を求められる時もある。

「野球の基本や礼儀を指導する意識を捨てたらいけませんが、子どもたちが意思表示する環境は必要だと思います。選手たちには考えて動けるようになってもらいたいです」

 静岡県には小学生や中学生にも女子野球チームをつくる動きが出始めている。花村監督が率いる県内初の小学生女子野球チームは「サッカー王国」に新しい風を吹かせている。

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