盗塁の成功率を上げる“リード” プロも実践…牽制死を避ける重心のかけ方

公開日:2023.03.19

更新日:2024.01.20

文:間淳 / Jun Aida

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体の向きをスムーズに変える…右足は靴一足分後ろに引く

 盗塁の成功率を大きく左右するスタート。理想のスタートを切るにはリードの仕方が重要になる。西武で4年連続盗塁王に輝いた片岡易之(当時、現・保幸)さんの走りをサポートしたプロトレーナーの安福一貴さんが4日、東京・荒川区の中学軟式野球チームで指導。盗塁の成功率を上げるリードの取り方を伝授した。右足は靴一足分後ろに引くことや重心のかけ方が重要になるという。

 プロ通算320盗塁を記録した片岡さんの活躍は、安福さんとの出会いなしには語れない。東京ガスから西武に入団した片岡さんは、プロ1年目を終えた2005年のオフ、安福さんと個人契約を結んだ。足を磨かなければプロで生き残れないという危機感と覚悟の表れだった。

 安福さんは走り方の基本から成功率を上げる盗塁の技術まで、片岡さんが足を武器にするために必要な知識や技術を伝えた。盗塁ではスタート、スピード、スライディングと「3つのS」が重要とされており、理想のスタートを切るにはリードが大切になる。

 荒川区の中学軟式チームで指導した安福さんは、選手たちにリードの仕方を伝授した。まず、ベースから5歩リードを取る。この時、右足を1歩目にして、2歩目の左足は前にクロスさせる。3歩目の右足は1歩目と同じように進行方向に出し、4歩目の左足は後ろにクロス。5歩目の右足は進行方向に出しながら靴一足分後ろに引く。安福さんは、こう説明する。

「盗塁は体の向きから90度回転させた方向へ走ります。胸を投手に向けながらリードして、体の向きを変えて次の塁を狙うわけです。この動きをスムーズにするために5歩目のリードで右足を少し後ろに引きます」

重心は左足7:右足3…帰塁できる準備で心にゆとり

 リードでは重心のかけ方もポイントになる。安福さんは左足と右足の割合を7対3にすることを勧めている。左手は左膝の上に置き、右手は脱力して下に伸ばす。左足に体重をかけておくことで、牽制球で逆を突かれても帰塁しやすくする目的がある。

「盗塁してアウトになるのは、チャレンジなので全く問題はありません。ただ、盗塁への意識が強すぎて牽制でアウトになるのは避けたい。左足に重心をかけて帰塁できる準備をしておくと、良いスタートを切れると気持ちにゆとりが生まれます。リスクヘッジしながら、盗塁の成功率を高めるわけです」

 この日の指導ではリードを5歩に決めたが、歩数にこだわる必要はないという。選手によってベストな方法は異なるので、1つの基準を設けて試し、自分に合った方法を見つければ良い。大切なのは、自分の形をつくることにあると安福さんは話す。

「試合は雰囲気、会場、天候など普段の練習と違う要素がたくさんあります。その中で練習通りの動きをするには、自分の形、ルーティンが重要になります」

 試合の流れを変え、時には勝敗を左右する力もある盗塁。成功率を上げる第一歩はリードにある。

○安福一貴(やすふく・かずたか) 東京都出身。プロトレーナーとして、2003年に独立。約20年間、プロアスリートをメインとして、計4000人以上のトレーニングを指導。数年間のインストラクター経験と整体学、整骨学の知識を活かし、プロトレーナーに。元巨人の高橋由伸氏、西武時代の片岡易之(当時、現・保幸)氏をはじめ、多くのプロ野球選手が師事。2016年に東京・五反田にパーソナルジム「STARTUG」オープン。2020年に株式会社スタークレス設立。

○アクセス
東京都品川区西五反田1-17-3 plaza square 五反田5F

○ホームページ
https://startug.jp

○インスタグラム
https://instagram.com/kazuyasufuku57/

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