失敗をそのままにしない、日付は変わっても自分自身は変わっていない

「走塁のスペシャリスト」としての美学もあった。「ホームに還るのが仕事。期待値が高い中で、サラリとこなした方がかっこいい」。鈴木さんは、成功の内容にもこだわった。ギリギリでセーフになるのではなく、余裕を見せられれば、次回以降の対戦で優位に立てる。難しい仕事をやり遂げた時も「表情から悟られることもある」と涼しい顔を崩さなかった。

「失敗を今、消化しなければ、あすになって日付は変わっても、自分自身は変わっていません。前に進むためには、やり残さない。自分から野球を取ったら何が残ると思っていました」

 子どもの頃、思い切りバットを振って打球を遠くまで飛ばした喜びは、プロになっても忘れることはなかったという。大好きな野球を続けたい。悔いを残したくない。その気持ちが前に進む原動力となり、やり抜くことが強さと自信につながった。

 20年間のプロ生活を「いつも、くそっ、負けるかと思っていました。相手というより自分との勝負でしたね」と振り返った。今すぐに失敗を修正し、その失敗を成長に変える。一歩一歩の蓄積が、勝負を決める一歩へとつながっていた。

(間淳 / Jun Aida)

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