ピッチャーの投げ方4種類を解説! 元プロが伝授、少年野球の“正しい投球フォーム”

公開日:2022.03.06

更新日:2024.08.19

文:First-Pitch編集部

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「ピッチャー 投げ方」と検索しているということは、投球フォームについて詳しく知りたいのではないでしょうか?大谷翔平投手やダルビッシュ有投手もそれぞれ異なるフォームを持ちますが、少年野球で自分に適した投球フォームを見つけるには指導者のサポートが欠かせません。

 正しく習得させるには“専門家”の意見を取り入れることが必要です。本記事では、中日で通算90勝を挙げ、数々のタイトルを獲得し活躍した元投手の吉見一起さんが、投球フォームで確認すべき5つのポイントを紹介。指導法に悩む方も簡単にアドバイスできる注意点をお伝えします。

目次

専門家プロフィール

    ○吉見一起(よしみ・かずき)
    1984年9月19日、京都府生まれ。金光大阪高、トヨタ自動車を経て2005年に大学・社会人ドラフト希望枠で中日に入団。「精密機械」の異名を持ち、卓越した制球力で2009年、2011年に最多勝、2011年には最優秀防御率など数々のタイトルを獲得。チームのリーグ連覇に大きく貢献した。NPB通算223試合で90勝56敗、防御率2.94。現在はトヨタ自動車硬式野球部のテクニカルアドバイザーを務めている。First-Pitchと連動している野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT(ターニングポイント)」でも、育成年代の野球指導に向けたトレーニング方法や理論を解説。

1.ピッチャーの基本的な投げ方

 ピッチャーの基本的な投げ方は「4種類」あり、それぞれボールを投げるまでの体の傾き方や腕の角度が異なります。

 その4種類とは、下記に分けられます。

◇オーバースロー

◇サイドスロー

◇スリークォーター

◇アンダースロー

 それぞれの投げ方のメリットとデメリットについて詳しく紹介していきます。

2.【ピッチャーの投げ方①】オーバースロー

ツインズ・前田健太(左)とオリックス・山岡泰輔【写真:ロイター、荒川祐史】

 直立した状態よりも、グラブ側(右投手なら左側)に体が傾いて投げる投法を指します。体が傾むくことによって、リリースポイントが自分の頭より高い位置に来るため、結果的に「ボールを投げ下ろす」ような形になります。

オーバースローのメリット

 オーバースローとは何かということをお伝えしたところで、どんなメリットがあるのか2つに分けて紹介します。

①球速が出やすい

 ピッチングフォームの中でも最も高い位置から投げる投法のため、重力も相まって球速が速くなります。

②角度のあるボールを投げることができる

 ボールを放すリリースポイントが高くなるため、角度のあるボールを投げることができます。下方向の力が強いボールは打者には脅威となります。

オーバースローのデメリット

 力強いボールを投げることができるオーバースローにもデメリットが存在します。大きく分けて3つ紹介します。

①体に負担がかかる

 腕を高く上げるので、上半身の傾きが大きくなりやすく肩や肘に加え、脇腹や腰などにも負担がかかりやすいです。

②ボールの出所が見えやすい

 ボールと体の位置が離れているので、比較的リリースの瞬間が分かりやすいと言われています。ほとんどのピッチャーがこの投球フォームなので、バッターがあまり苦にならない、強い個性がないということも挙げられます。

③コントロールをつけるのが難しい

 最も力を入れやすい投げ方なので、力んでしまい、ボールがすっぽ抜けてしまったり、叩きつけてしまうこともあります。

3.【ピッチャーの投げ方②】サイドスロー

ソフトバンク・津森宥紀(左)と巨人・高梨雄平【写真:荒川祐史、矢口亨】

 直立した状態から、投げる方の手側(右投手なら右手)に体が傾いて投げるフォームを指します。打撃のように腰を横回転させ、腕はバットのスイングに近い軌道を通ります。リリースポイントが体の横に来ることから、サイドスロー(横手投げ)と呼ばれます。

サイドスローのメリット

 サイドスローにはどんなメリットがあるのか、2つに分けて紹介します。

①横回転の変化球が投げやすくなる

 ボールの回転は横回転になるので、スライダーやシュートなどの横方向に曲がる変化球が投げやすくなります。

②ボールの出所が見えずらい(打者と投手が左対左、右対右の場合)

 右投手対右打者、または左投手対左打者の場合、打者にとって投手のリリースポイントが見えづらくなり、外に逃げていく変化球などへの対応も難しくなります。

サイドスローのデメリット

  一方で、デメリットもいくつか存在します。

①球速が出しづらい

 サイドスローで投げるとボールが横回転になるため、リリースからキャッチャーミットに届くまでに空気抵抗を受けやすくなり、その分球速が落ちてしまいます。

②落ちるボールが投げにくい

 横から投げるフォームのため、フォークなどの縦に落ちるボールが投げにくいです。

4.【ピッチャーの投げ方③】スリークォーター

パドレス・ダルビッシュ有(左)、楽天・田中将大【写真:AP、荒川祐史】

 直立した状態とほぼ同じ体軸で投げるフォームを指します。直訳すると「4分の3」という意味を持つこの投げ方は、リリースポイントがオーバースローとサイドスローの中間あたりになります。多くの日本人投手はこの投げ方に当てはまると言われていて、ダルビッシュ有投手や田中将大投手ら、球界を代表する投手たちもこれにあたります。

スリークォーターのメリット

 最も一般的な投げ方で、メリットは大きく2つあります。

①体の負担が少ない

 他のフォームと比べてどこかを大きく捻るということがないため、肩や腰、肘など体全体への身体への負担が少なく済みます。

②ボールをコントロールしやすい

 体への負担も少なく、バランス良く全身を使ったフォームのため、ボールをコントロールしやすくなります。

スリークォーターのデメリット

 スタンダードな投げ方である一方、デメリットも存在します。

①他のフォームと比べて特徴が少ない

 オーバースローのように高い位置から投げおろすわけでもなく、サイドスローやアンダースローのように特徴的な投げ方ではなく、特徴が少ないフォームです。

②シュート回転しやすい

 スリークォーターで投げると、ボールの回転軸が少し横向きになってしまいがちになります。ストレートを投げるとシュート回転のボールになってしまうことがあります。

5.【ピッチャーの投げ方④】アンダースロー

西武・與座海人(左)とソフトバンク・高橋礼【写真:荒川祐史】

 直立した状態から、腰を大きく曲げて体を倒したような形で投げるフォームを指します。ほぼ直角に体が倒れた状態で投球するため、強靭な下半身が必要とされます。地面に近い位置からリリースされることからアンダースロー(下手投げ)と呼ばれます。また、潜ったように投げる姿が潜水艦を彷彿とさせることから「サブマリン」の異名を持ちます。

アンダースローのメリット

 最も特徴的な投げ方といえるアンダースローには、どんなメリットが存在するのでしょうか。

①独特な軌道で打ちにくい

 打者にとって真っ直ぐ来るはずのストレートが浮き上がってくるような軌道となり、変化球も軌道も他のフォームと異なるため、打ちにくく感じます。

②アンダースローの投手が少ない

 そもそもアンダースローで投げられる投手が少なく、慣れていない打者が多いので打ちにくくなります。

アンダースローのデメリット

 希少で打ちづらいとされるこのフォームですが、一方デメリットも存在します。ここでは大きく2つに分けてお伝えします。

①球速が出にくい

 アンダースローは下から上へ重力に逆らって投げているので、スピードボールを投げるのが難しいです。

②盗塁されやすい

 投球動作が大きく、クイックモーションが難しいため、相手走者に盗塁を狙われやすいです。

6.ピッチャーの投げ方の違いは「体の軸の傾き方」

 それぞれの投球フォームの特徴から、投げ方の違いは「腕を振る角度」ではなく、「体の軸の傾き方」によって分類されることが分かります。よく「腕を横から振るからサイドスロー」「下から投げるからアンダースロー」と言われることがありますが、実際に変わっているのは腕の角度ではなく、体の傾きなのです。

ズレが故障の原因になることも

 どのような投げ方であっても、グラブを持つ手側の肩から投げる方の手側の肘までは、ほぼ一直線のラインになっています。これを逸脱すると体の力を連動させることが難しくなり、故障の原因にもつながります。特にサイドスローやアンダースローに挑戦する際には気を付けたいポイントです。

手首が寝てしまうことも

 サイドスローやアンダースローを試した時に、手首が横になって寝てしまう選手がいます。これでは、リリースが不安定になったり、ボールが弱くなったりするので、肩から肘までのラインだけでなく手首の角度にも注意すべきところです。

7.プロが指摘する小中学生の投げ方の注意点とは

 ここまでお伝えしてきた投球フォームの種類やメリットなどを踏まえ、中日のエースとしてプロの第一線で活躍した吉見さんは、すべての投球フォームに共通する注意すべきポイントを紹介していきます。

投球動作で意識すべき5つのポイント

ベストな投球フォームは選手によって違います。しかし根幹になる動きには共通点があり、自分に合った動きを知ることが大切です。吉見さんは、投球動作で注意すべきチェックポイントは以下の5つあると話します。

①軸足(右投手は右足)

②体重移動(並進運動)

③地面につく前足(右投手は左足)

④回旋運動

⑤投げ終わりの前足

 特に重要視するのは①と⑤です。安定させる方法は少年野球もプロも同じで、吉見さんも実際に現役時代は意識していたそうです。

注意点①軸足

 まず最初の動きである軸足の動きを正確に身に付け、安定させないとその後の体重移動や回転運動に大きな影響が出ます。軸足を安定させるポイントは真っすぐ立つこと。動き自体はシンプルですが、選手によって差が生まれます。

 立つ時は足の裏の母指球(親指の付け根)に体重を乗せるのが一般的ですが、吉見さんは中指と薬指の付け根で立つイメージを持っていました。注意するのは、かかとに体重が乗らないようにすることです。かかとに体重がかかると上体が反ってリリースの時に体と投げる手が離れて、力が逃げてしまいます。

注意点②投げ始めと投げ終わりの前足の動き

 力が打者の方へ真っ直ぐ向かず、外側に逃げてしまうことを避けるため、地面についた前足の外側に体重が乗らないように気を付けます。また、投げ終わりの前足は、投げ始めの軸足と同様に安定するポイントを見つけることが重要です。吉見さんは母指球で体を支えていたそうです。

8.ピッチャーの投げ方のまとめ

 投球フォームには、さまざまな種類があり、人それぞれベストな投げ方は異なります。しかし全てのフォームの根底に存在する注意点を確認することで、変な癖が身についたことによる怪我のリスクを減らしたり、上手くボールに力を伝えたりすることができるようになります。正しく効果的なポイントを伝えてあげれば、大きな成長を導くことができるのです。

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