ガム噛みながら練習する子どもたち “型破り”な野球塾が支持されるワケ

2021.09.28

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米国など4か国でプレーした元投手、中日・小笠原慎之介も指導

 練習の合間にポイッとガムを口に放り込んだ子どもたちは、モグモグさせながらバットを懸命に振る。指導者は怒るどころか、さらに盛り上げるように言う。「打つ瞬間に風船が作れたらバッチリだね! 絶対、写真使ってもらえるよ!」。野球塾で過ごす1時間半。とにかく全員、笑顔が絶えることはない。【小西亮】 (2021年2月23日、Full-Count掲載)

 65平米ほどのビルの一室で、毎日繰り広げられる光景。神奈川県藤沢市の駅近くにある「Perfect Pitch and Swing」では、小中学生を中心に約120人が受講する。レッスンは週1回。マンツーマンの「プライベート」は年々需要が増し、今では3分の1程度にのぼる。

「最初のころは『教えて上手くしなきゃ』と思っていました。今はヒントを散りばめて、子どもたちが自分で答えを見つけるのを待てるようになりましたね」

 2011年に開講して丸10年。指導する長坂秀樹さんは「狭いんで、そろそろ新しい場所に移りたいんですが……」と頭をかく。東海大三(現・東海大諏訪)時代にエース右腕として夏の甲子園に出場。大学卒業後は米国やカナダなど4か国でプレーした最速152キロの独立リーガーだった。

 ボーイズリーグの強豪「湘南クラブ」でコーチをした時期もあり、東海大相模から中日にドラフト1位で入団した小笠原慎之介投手も指導。「どうしたら速い球を投げられますか?」と目を輝かす左腕にメジャー流のトレーニングを伝え、甲子園優勝投手の素地を築いた。野球とはまた違う“ベースボール”を肌で感じてきた経験が、指導内容や考え方に色濃く反映されている。

「教えられたことに、すぐ『はい』と頷かないでいいよと言っていますね。僕が言っていることだって疑えと」

 監督、コーチからの指示に、直立不動で返事をするしかなかった自身の若かりし時代。練習の意図すら理解することなく、ただ数をこなしていた我慢の記憶は今も残っている。海を渡って米国の子どもたちと接する機会があった時、次から次に質問の挙手があることに驚いた。「なんで?と思って、自分で理解してやらなきゃ身につきませんからね」と言う。

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