プロの“関心集める”逸材小学生への条件 野球上手でも…希少枠に「選びにくい」難点
小学生の“プロ登竜門”「12球団ジュニアトーナメント」…年末に向け春先から大会視察の首脳陣も
毎年12月末、プロ野球の本拠地球場で、プロと同様のユニホームを着て熱戦を繰り広げる「NPB12球団ジュニアトーナメント」は、小学5、6年生の選手だけでなくその保護者・指導者にとっても“憧れの舞台”だ。毎年5月末に大会要項が発表され、各球団の募集が始まるのは6~7月だが、春先から学童大会を視察に回るというジュニア監督も中にはいる。1チーム16人という“希少な枠”を手にするアピール機会は、始まっているともいえる。
では、数百人、数千人の応募の中から、どんな小学生が選ばれやすく、逆に「選びにくい」のはどんな選手なのだろうか。昨年大会で各チームを率いた監督たちの言葉からまとめてみた。
選考方法や選抜段階は各球団で異なる。阪神ジュニアのように、「50m走7.5秒以下、球速100キロ以上、遠投60メートル以上」などの条件をつける球団もあれば、ソフトバンクジュニアのように、スポーツ量販店が行う「ピッチング・スイングスピードコンテスト」を選考材料にした例もある。1次は動画選考を行う球団が多く、「アピールできる動画を上手に作れるか」は大きなポイントになる。
実際に首脳陣の目の前で持ち味を披露する機会は2次選考以降となるが、そうした過程で各指揮官はどこに注目しているのだろうか。技術面でまず挙げられるのが、“キャッチボール”だ。
ソフトバンクジュニアの帆足和幸さんは、「キャッチボールがちゃんとできている子は、守備もある程度うまい」と言う。ロッテジュニアの小林宏之さんもキャッチボールとボール回しを重視し、「(相手の)捕りやすい所に投げるのも重要な能力」と語っている。
走攻守のうち1つでも、秀でた能力があるかも大切といえる。巨人ジュニアの西村健太朗さんは、「走塁に長けている子とか、守備が無茶苦茶上手い子とか。秀でているものを持っていれば、選ばれる確率が高くなる」と語る。広島ジュニアの安部友裕さんも、「全てがまとまった選手よりは、特性がはっきりしている選手を選んだ」と言い、中でも守り勝つ野球を目指し二遊間の守備力を重視したという。
昨年大会で優勝したDeNAジュニアの荒波翔さんも、守り勝つ試合をイメージし、投手に関しては「ある程度、球速が出る子を意識してセレクションしました」と言う。加えて「僕らの頃は、ピッチャー、キャッチャー、ショートを守る子は、どのポジションもできる時代でしたが、今はそうとも限らない」と、外野手の選考はフライを捕れるかなどの“専門性”も重視したという。
全力疾走しない選手や“目立たない”選手は選考しにくい
そうした技術面に加え、各球団の指導者が口をそろえて重視すると語ったのが、野球に対する“姿勢”や“心”の部分だ。
巨人ジュニアの西村さんは、「打った結果だけではなくて、打てなかったとき、抑えられなかったときの振る舞いを見る」といい、中でも「全力疾走ができない選手は選びにくい」と語っている。阪神ジュニアの柴田講平さんも、「周りが見える選手」をポイントに挙げ、「調子が悪い時でも切り替え、自分の姿を常に見せられる選手は強い」と、イニング間や守備に就く際の動きなど細かい部分までチェックしたという。
積極的に声出しをしてアピールしようとする姿勢が好印象を与える、と語るのはロッテの小林さん。「目立たないと、選考している側としては取ろうとは思わない。そういう気持ちが選考会で出ている選手を選びます」。
楽天ジュニアの大廣翔治さんも、ハートの強さを重視する。毎年春先から夏場にかけて、東北6県の学童大会を視察に回るといい、「三振したのに照れ笑いを浮かべているような子より、技術は多少粗くても悔しさを露わにする子の方が成長できます」と力説する。
各指揮官が精神面や行動面も重視する理由には、夏場のセレクションを経て、本番までの約3か月という短期間でチームをまとめ上げなければいけない事情もある。野球が上手いだけでは選ばれない。プロの第一線を知る指揮官たちの言葉を参考に、大舞台を夢見る選手たちの努力はもちろん、保護者や指導者も選手をサポートしていきたい。
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